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マジョリカ〜湖畔の城 エナ1

 ピクニックから帰った翌日、当たり前のようにエドナ診療所へ出勤して来たティムは、僕に会うなりこう言った。 「次の休診日の前夜、湖畔の城へ行かないか?」 「湖畔の城って、あの観光名所の?宿泊予約なんて何年も待たないと取れないはずだよ?」 「エナ?オレが誰だか忘れてない?これでも魔王城に宿泊する賓客だよ?」 「うわぁ、権力の濫用だ。本当に大丈夫なの?まぁ、湖畔の城はコウ兄とリン兄が初めて結ばれた場所だし、一度は行ってみたいと思ってたけど・・・」 「ならちょうどいい。あそこは前魔王様が設計した城らしいな。魔族の城に興味があって案内してもらったんだが、すごく気に入ったんだよ。 最南の島にも魔族や人族用の宿泊施設を作るつもりでね、あの城はそのイメージにぴったりなんだ。 で、エナの処女を頂くのもあそこしかないって思ったんだけど?」 やめて?!正直いたたまれない。要するに、僕とSEXする為に超高級ホテルを権力を使って押さえたって事でしょ? 「その時に案内してくれたのがリンだ。城のメンテナンスをやってるらしいな? 昨日の夜にリンが魔王城に居たから、湖畔の城に泊まれないか相談したんだよ。その時にエナがオレの番だって話すと、リンが持っている宿泊の権利を譲ってくれたんだ。」 ・・リン兄・・・これはリン兄にお礼を言うべきなのか?宿泊の権利って、コウ兄との記念日とかに押さえてたんじゃないのかな?う~ん、後でリン兄に聞こう。 「ま、まぁ、そういう事なら・・・」 「よし、覚悟をしてね?もう待たないから。」 「う、うん。」 ティムの目がギラギラしてて、もう逃げられないなって思った。まぁ、自分から言ったんだし僕も腹をくくろう。  本日の診察時間は終了。ティムも今日は素直に魔王城に帰った。大概ごねて何とかここに居座ろうとするからな。けど、あんまり頻繁にこっちに泊まると父さんがうるさいんだよ。 うん、まぁ一緒に居たいのは僕もなんだけどね。夜をともにしたら絶対そういう行為をしちゃうじゃない?僕も拒否出来ないと思うから。けど、せっかくだからなし崩しにそうなるんじゃなくてちゃんと覚悟して挑みたいんだよね。ティムにもそう宣言したし。 それに何度も最後までするのを我慢させるのは申し訳ないってのもある。 だから湖畔の城へのお誘いは願ったり叶ったりなんだけど・・・ 「ドナ、ネル(リンの契約精霊のユキヒョウ)に今から行ってもいいかリン兄に聞いてもらって?」 「ん・・・いいって。もう家に帰って来てるみたい。」  僕は憑依してランさんが営むカフェ、マジョリカへと飛んで行った。コウ兄とリン兄はこの店の二階に住んでいるんだ。ちなみにランさんは再婚して旦那様(ルイくんの父親)と一緒に別の城に住んでいる。 マジョリカはまだ営業中だ。とりあえずランさんにもあいさつしないと。 憑依を解き、僕はマジョリカの扉を開けた。 「こんばんは。」 「いらっしゃいませ。あら?エナちゃんじゃない!久しぶりねぇ。」 「はい。ご無沙汰してます、ランさん。 あっ、僕、お礼を言わなきゃ。 ランさん、僕に料理を教えて頂いてありがとうございました。おかげさまで、こ、恋人にも絶賛されました。」 「うふふ。話は聞いてるわよ?ドラゴン族の王子様に求愛されて付き合ってるんだって?いいわねぇ~素敵だわ~ローゼの息子なのよね?」 「へっ?!ローゼ、様?何でランさんがティムのお母様を知ってるんですかっ?!」 「あら、私とローゼはお友達よ?カグヤちゃんが紹介してくれたの。 最近カグラちゃんが連れてるドラゴン族のイアンくんは知ってる?そのイアンくんのお母さんのエリンと、ローゼ、カグヤちゃん、私、の四人は最近仲良しなの。よく四人でお茶してるのよ?」 な、何かものすごいメンバーなんじゃないかな?カグヤ様は言わずもがな、ランさんも相当に強い魔族だ。契約精霊も豹だし、父さんより確実に強い。強い魔族ベスト五に入るくらいの実力者で、前魔王様に食ってかかる唯一の存在(しかも負けない)らしい。前魔王様の今の奥様(前魔王様は再婚)、つまり前魔王妃様がランさんの弟さんなので色々と思う所があるんだろうけど。 で、確かティムのお母様の契約精霊はリヴァイアサン。伝説のドラゴンの中でも一、二を争う強さのはずだ。 そして、エリンさんは成体になってから黄龍の精霊と契約した規格外のドラゴン、ってティムに聞いた。よっぽど心が綺麗で、強さも桁違いなんだろう。 成体でも精霊と契約出来るなんて初めて知った。魔族が契約する猫科動物の精霊とも基本幼少期にしか契約出来ない。精霊は無垢な魂が好きだからね。 そんな四人の女性が集まってお茶してるのか・・世界でも滅ぼせそうな面子だよね・・・ ーーーーーーーー  前作までの人間(魔族)関係の説明。 気になる方は読んでください。どうでもいい方はスルーを。 前魔王のジュンは若い頃に人族の娘カコと結婚。現魔王のキョウとカグヤが生まれるも、ジュンの性的にも自由奔放な部分にカコが疲れ果て離婚。 その後ジュンは改心し、ランの弟のレンと出会い再婚。今ではレン一筋。 カコは人族の国に戻り、再婚してユイ(腕白王子ちゃんの主人公)を産む。 ランも、若い頃に人族の国で遊学中に恋愛をしてリンを身籠るも、すぐに破局。 魔族の国に戻り一人でリンを育てる。 その後、コウとリンの一件で建築家のロム先生と出会い結婚。ルイが生まれる。 前世(アスラ、ルイにとっての前世)の現代日本と、大体同じような経緯で人間関係が成り立っているという設定です。

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