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エピローグ エナ

 あれから一年が経った。 今はティムたちが魔族の国で留学中。僕もこっちへ戻って来ている。 あの後、僕は週に二回最南の島からワープポイントを使って魔王城に着き、そこからエドナ診療所に出勤する生活を送った。 毎回魔王城に着くのは気が引けて仕方なかったけど、カグラちゃんとイアンくんと更に仲良くなったり、王妃様のアスラ様にも良くして頂いてまた本を借りたりと、なんやかんやで楽しい日々となったんだ。 エリン様は意外と診療所での仕事が向いていたようで、僕が来ない三日間、何の問題もなく診察してくださった。特に子供たちに人気で、暇な時には近所の子たちと一緒に遊んでいるとの事。時々父さんまでそこに混じっていると、苦笑いのコウ兄から聞いた。 父さんとエリン様も仲良くしている。 「アキは男だけど、ドラゴンの雄みたいに強引じゃないから好き。ワタシが何をしてても怒らないし。」 そう言うエリン様は恋する乙女のようで、とても百歳を超えているとは思えない。まぁ、ドラゴンの感覚で言うと魔族の二十歳すぎと変わらないらしいので、そんなに不思議な事ではないようだ。 ティムが言っていた事(完全憑依して繋がると相手と魔力が混ざり、寿命が長い方が短い方に命を分ける)が本当なら、父さんの寿命も延びるのかな? ドラゴンは完全憑依しても人型に寄せる事が出来るので、エリンゼ様になっても黄龍のままでなくエリン様に黄龍が混じった姿にもなれるようだからね。完全憑依をして繋がる事もあるかもしれない。 今はまだプラトニックみたいだけど。 イアンくんも双子の妹のミランちゃんも、父さんとエリン様の事は応援してくれてるみたいだし、本当に良かったなって思う。いつか家族になれるといいな。  ティムの留学が終われば、僕はまた最南の島へ着いて行く。けど、ワープポイントもあるし、週に一日くらいはエドナ診療所をやりたいな。 今は基本僕が診療所をやっているけど、エリン様も時々遊びに来て手伝ってくださる。エリン様さえその気なら、エリンゼ診療所に名前を変えて続けてもらいたい。で、エリンゼ診療所が休みの一日だけエドナ診療所にするとか? うん、またエリン様に相談してみよう。  今は、ティムとレニちゃん、マニくん、そしてミランちゃんが魔族の国で留学中だ。レニちゃんとマニくんはこの一年の間に、ミランちゃんとともにドラゴンの谷を統一したらしい。それで本格的にドラゴン族と魔族の国交が始まったんだ。 ティムたちが何を学ぶのかと思ったら、国の動かし方のような政治的な事を勉強するんだって。 ティムはシグ様のもとで宰相の仕事を学んでいる。この二人、妙に気が合うようでティムも毎日充実しているようだ。 ちなみにレニちゃん、マニくん、ミランちゃんは、ショウ様とルイくんと一緒に学んでいるらしい。 僕はシグ様の奥様であるユイ様とも仲良くなった。色々とここでは言えないような事も教えて頂いて、すごく為になっている。 そうそう、マジョリカで時々開催されるネコ会議に僕も混ぜて頂く事になったんだ。これまた非常に為になる話が聞けるので助かってる。すごく楽しいしね。 ユイ様は城のデザインをしていて、リン兄とコンビを組んでいる方でもある。ユイ様がデザインした城に、利便性を加え生活しやすいよう設計をするのがリン兄。このコンビは魔族の国の建築業界で大人気なんだ。 最南の島に、魔族や人族用の宿泊施設な城を建てるというティムの計画も、この二人のおかげで実現した。やっぱりドラゴンには魔族の城は設計しにくいだろうしね。 今では城も完成し、僕とティムの最南の島での住まいとなっている。その城を管理しながら、一階の一部をホテルとして整備し、二階を僕たちの居住空間としているんだ。留学中の今も週に一度は帰っている。 城には従業員さんもいて、信用できるドラゴンが人型になって住み込みで働いてくれているので安心だ。その支配人のドラゴンは、ミクさんという昔ティムのお世話係だったというすごく有能な雌ドラゴン。 ホテルの支配人をしながら、宿泊客の魔族と輸出入の取引をしたりして、最南の島の経済を発展させている女傑なんだ。ティムは未だにミクさんには頭が上がらない様子。けどミクさん、僕にはすごく優しいんだよ? 二年後に最南の島へ戻ったら、僕がホテルでカフェをやるって話もある。僕の手料理に感激したミクさんに押し切られた感じだ。まぁ、マジョリカみたいなカフェが最南の島にあったら魔族が来た時に重宝されるかな?って思うし、前向きに検討中。 魔族の国にいる間にランさんにもっと料理を習っておかないと。  もちろん僕とティムとはラブラブのままだ。王族のみなさまも優しいし、僕は本当に幸せ者だと思う。 「エナ?どうしたの?オレにちんこ突っ込まれてるのに考え事?余裕だなぁ。そんなにお仕置きされたいの?」 「ヤダっ、違うよっ?!僕は幸せ者だって思ってただけ・・・ひっ!あぁぁぁんっ!!激しっ・・・あぁぁぁぁっ!!」 「くっ!煽るなっ!!オレを煽った責任をとれよ?」 ニヤリと笑うティムを見て、今からの行為を想像し、僕は更に欲情する・・・あぁ、僕は本当に幸せ者だ・・・・ 「伝説の最強ドラゴンは心優しき白猫を溺愛す」 完 ーーーーーーーーー  最後までお読みいただき本当にありがとうございます。 ティム×エナは何というか、すごく上手くハマってくれて、書きやすいカプでした。これが番ってヤツか?!と、書きながら思ってましたw  これで本編完結とさせていただきます。が、番外編が数話続きます。 みなさま、もうしばらくお付き合いいただけると幸いです。 ルコ

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