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第3話
ちょっと飲みすぎて。
公園で休んでいた。
ベンチに座りぼんやりしていた。
いつもながらのベータらしいパッとしない毎日だ。
アルファが社会を動かして、ベータがそれに従う。
それに皆不満はない。
それで上手くいってるし、アルファは本当に優秀なのだから。
ベータと違ってアルファは【本当の】実力主義だ。
アルファは競争を好み、実力のないものを嫌悪する。
ベータみたいに実力がないことを誤魔化そうとしたり、嫉妬で足を引っ張ろうとしたりはしない。
アルファが動かす社会はクリーンで実力による競争に成り立っているのだ。
だからベータが歯車なのは仕方ないし、それで良いと思っている。
ばっとしなくても。
ただ、可愛い恋人でもいれば良いんだけど。
そう思ってた。
パッとしないベータにはパッとしないベータがお似合いだろうが、そのベータの中でも競争はあって。
恋人を得るという競争も中々大変で。
アルファに憧れるベータの社会も競争になりがちなのだ。
疲れてしまってた。
恋まで競争であってたまるもんか。
本当にそう思っていた。
ルックスや財力、コミュ力、あるだけのモノで勝負して、相手の女の子もまた自分のそれらで勝負を仕掛けてくるのだ。
こんなゲームか恋なのかと思うと疲れてしまう。
競争社会につかれてた。
アルファの真似事はもう嫌だった。
出会いの飲み会を抜けてしまったのは、本当にそれに疲れたからだった。
ぼんやり座っていたベータの隣りに人が居るのに気づいた。
こんな、夜の公園で?
他にも空いてるベンチがあるのに?
ゾッとした。
犯罪としか思わなかった。
だが、慌てて様子を見た、横に座るその人は。
女性で。
しかも、すごい美人で。
薄い化粧が美貌をさらに際立てていて、なんか、見蕩れた。
「あの・・・何か?」
震えて聞いてしまった。
こんな美人が自分の隣に座るのは普通じゃない。
美人局。
怖いおにいさんが出てくるのだ、と思った。
でも、その人か震えてて、でもその目が潤んでて、見つめられて。
色んな考えが消し飛んでしまった。
吸い込まれるとはこういうことだと、呆然とその潤んだ瞳から目を離せないし、動けない。
グロスを塗っただけの唇の、紅さに喉が鳴る。
白い腕を伸ばしてくびを引き寄せられ、キスされてからは、もう訳が分からなくなった。
こんなキスをしたことがない。
女の子に食べられるようかキスをされるなんて考えたこともない。
擦り合わさせる舌の感触に全身が沸き立ち、噛まれる歯の甘さに震えた。
ズボンの前を空けられ細い綺麗な指で扱かれるのも、抵抗出来なかった。
ただされるがまま、塞がれた唇の中でうめき声を漏らすだけ。
ズボンを脱がされ、夜の公園のベンチで跨られた。
その人はスカートを着たままで、深くベータのペニスを咥え込み、腰を振り、上下に動かし、いやらしく踊った。
叫んでいたのはベータだった。
いままでのセックスと何もかもが違った。
こんなに熱く包み込まれたことはなかった。
いやらしく響く音。
絞りとるように動かれ、擦られ、襞に扱かれる。
こんな感触知らなかった。
跨られ踊る尻のいやらしさを腿や腹に感じ、その柔らかい尻を掴んで下からも突き上げずにはいられなかった。
女が泣いていて、細い身体が背中をのけぞらせ、スカートからはみ出す脚の白さな狂いそうになる。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
女の声は低くて。
でも心地良くて。
丹念にそこで揺らされて、悲鳴のような声をあげて射精したのはベータだった。
「お願い・・・お願い・・・今夜だけでいい。セックスして欲しいんだ」
女は言った。
入ったまま揺すられ、悲鳴を上げたが、また固くなるのがわかった。
その中は、狂ったように良かった。
こんなのおかしい、と思うほど。
いや、おかしいのだ。
違うのだ。
根本的に違うのだ。
もう分かってしまっていた。
「お願い・・・頂戴・・・」
苦しげにその人が言った。
もう女性ではないと分かっていた。
オメガだ。
男性でも女性でもない、オメガだ。
オメガが女性の振りをして、近寄ってきたのだ。
「お願い・・・」
腰を淫らに使われて、揺すられた。
濡れた音と、切ない喘ぎ声。
むりゃぶりつかれ、欲しがられ、しぼりとられる
なら、もうベータには叫び、狂うしか出来なくなっていた。
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