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第8話
目覚めたオメガに食事をあたえた。
オメガは明らかに狼狽し、必死に謝り出ていこうとしたが、とにかく食事をすすめた。
目の前に出された食事に、お腹が鳴ったオメガは赤面しながら、ベータが作った食事を食べ始めた。
3日ほど食べてなかったらしい。
食事も睡眠も無視して、ひたすらセックスするのだ。
三日間。
それがオメガとアルファ。
「謝りたい」
オメガはポロポロ泣きながら、それでも食事をほうばりながら言う。
クスっと笑ってしまった。
大人びて、落ち着いた雰囲気はどこにもなくて、思いの外可愛いかったから。
ベータが笑ったらオメガは更に赤面して可愛いかった。
自分より5つ位は年上だろうに。
自分のスウェットをダボダボに着て、長い髪を渡した普通の輪ゴムで束ねて。
そのなんだか気のはらない感じが、壮絶な美貌を受け入れやすくしていて、ホッとした。
「僕は。そういう人間じゃないんだ。オメガだって、倫理観はある。迷惑をかけておいてアレだけど、誤解しないで欲しい」
泣きながらオメガは言った。
ご飯粒を口もとにこぼしながらオメガは泣くので、ベータは指を伸ばしてとってやる。
可愛さがもう何より勝っている。
「分かってますよ」
そう言った。
「このお礼は必ずする。絶対に。でも・・・このことは誰にも・・・あの人達にも口止めを・・・」
オメガが震えた。
怯えているのだ。
何に?
分かっていた。
アルファだ。
番のアルファだ。
「分かってますよ。逃げてるんでしょ?女装までして」
言って見た。
それを聞いてオメガは子供みたいにクシャクシャになって泣いた。
でも食事を口に入れるのは止めようとしない。
可愛い。
そう思った。
だけど、このオメガが抱えるトラブルのことを考えたら正直ゾッとした。
だが。
本当に可愛かった。
「ワケありなんですよね?・・・話してみませんか?」
そう優しく言ったなら、オメガは大声をあげて泣き出した。
でも。
それでも茶碗を掻き込むのは止めなかった。
本当に可愛い。
これはもう。
逃げられないとベータは覚悟した。
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