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第11話
「お礼がお礼がしたい・・・」
オメガが泣くから。
「あんな真似をしたけど、ボクはボクは・・・そういう人間じゃないんだ」
泣くから。
「じゃあ、今度食事でもどうですか?悪くとらないで。貴方のことは好きだけど貴方と寝たいわけじゃない・・・いや違う・・・そういうんじゃなくて。貴方にまた会いたいだけなんだ。分かってくれる?セックスの話じゃないって」
どう口説けばよいのかわからなくて、支離滅裂になった。
誤解はさせたくないけど、知り合った経緯が経緯だから、そういうのじゃないと伝えてるのが難しい。
頭を抱えて黙り込んでしまった。
こんなの伝わらない。
セックスとかそういうのじゃなくて、単に好きになったなんて、これだけ色々してからじゃわかってもらえない。
絶望した。
でも沈黙が続いて耐えられず顔をあげたら、オメガが真っ赤になっていた。
伝わってた
何でもだか伝わった。
セックスからはじまってしまったし、他の男達にこの人を抱かせるようなこともしたのに、それでも、それでも普通に恋が始まっていることは滑稽で、でもだから切実で。
「君は。おかしい。あんなボクをみたのに」
オメガは泣きそうな声で言う。
その通りだとも思うし、違うとも思う。
「そこじゃないんですよ。オレが貴方だな、って思ったのは。多分、こういうとこです」
ベータはオメガの口元にまたついていたご飯粒をとってやる。
「セックスの話だけなら、オレには貴方が怖い。オレはベータだから。でも。貴方は可愛い。とても。離したくない」
それは心からの言葉だった。
色んなことが怖いのに、ベータはこのオメガを離したくないと思ってた。
「君には無理だ。ボクは訳ありオメガだぞ」
オメガは泣いて断ってくるが、ベータはつけ込める余地はあると思った。
「頼って。オレはベータだけど貴方に出来ることはあるよ」
心から言った。
オメガはアルファのもの。
それがどうした、そう思った。
行きずりセックス、乱交、その果てで。
何故か。
プラトニックな恋が生まれてた。
キスもしないで、ただ、見つめ合うことから、恋人としては始まった。
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