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第13話

それでも発情期が何度か来てしまった。 最初の発情期は、苦しみはしたけれど、ベータと狂たように何日かセックスするだけで耐えられた。 やはり薬は効かないのた。 恋人は耐えていた。 なにがあっても10日ほど我慢すればいいんだから、と。 でも、その次に来た発情期はキツかった。 狂ったようにセックスもした。 でも足りない 足りないのだ。 ベータ1人では足りない。 オメガが欲しいのは。 番の精液を、胎内に欲しいのだ。 その飢えの凄まじさにオメガは泣く。 中に出して、出してぇと。 睡眠薬でやりすごそうとしても、眠れない。 泣いて苦しみ、少しでも楽になろうと自分の身体を弄るオメガは憐れだった。 玩具をみずから穴に入れ尻を振る。 だけどダメだなのだ。 中に出されないとダメ。 欲しい欲しいと泣きながらオメガは苦しむ。 これほどまで苦しいのだと。 ベータもその様子に苦しむ。 でも、もう体力も限界だった。 「ダメだ。そんなことしたらダメだ。我慢できるから」 我慢出来ないくせに、苦しんでるくせにオメガが言う。 「辛いんだろ。・・・いいんだ分かってる。愛してる」 ベータは言った。 また友人達を使うわけにはいかなかった。 でも、オメガをよく知らない男達に引き渡すわけにもいかなかった。 頼ったのは知り合いのアルファだった。 「ふざけんな」 断られた。 当然だ。 アルファはベータと結婚していた、変わり者のアルファだったから。 オメガは嫌いだと言っていた。 アルファ同士の競争からも離脱した、かわりもののアルファで、結婚したベータをこよなく愛してるも知ってた。 引き受けるわけがないだろうと普通は思う。 だが食い下がる。 知ってるからだ。 アルファやオメガが何なのかを。 「足りてないはずだ。ベータで足りるはずが無い飢えがあるんだろ」 そう言ったなら、アルファはキレた。 殴られた。 吹き飛ばされた。 アルファに本気で殴られたならベータは死んでしまってもおかしくない。 怒り狂うアルファは恐ろしい獣だった。 だが諦めない。 「愛してるんだよな。わかるオレだって愛してる。でも足りないんだ。仕方ない。苦しんでるんだ。あんただってそうだろ?」 ベータは懇願する。 だが懇願だけでは無理だともわかってた。 「知ってるんだ」 そう言って脅した。 そう。知ってしまっていた。 そのアルファがたまに本当にたまに。 オメガを抱いているのを。 アルファは。 色んな理由で番を作らなかったりするオメガと、セックスをする為だけの仕組みもある。 望みのオメガが得られなかったり、番が死んだり、そういうアルファと、番を亡くしてしまったオメガ等のためのマッチングだ。 それだけ番がいないということは、アルファにもオメガにも辛いことなのだ。 耐えて利用しないアルファやオメガもいる。 抑制剤で耐えるのだ だが、このアルファは違うと知っていた。 見た事があったから。 隠れるようにオメガを連れてどこかへ行くのを。 オメガ嫌いなのに。 アルファは黙った。 それをバートナーのベータに知られるのが怖いのだとわかった。 本当に愛してるのだ。 「オメガを抱きたがってるアルファどもなら居るだろう、オレに言うな」 アルファは言った。 苦々しく。 自分もそうしているとは認めずに。 「訳ありなんだよ。オレの恋人は死んだことになってるんだ。生きてると知られるわけにはいかない」 秘密を明かした。 その仕組みは使えないのだと。 アルファは黙った。 「オレだって、恋人をあんたに抱かせたいわけがない。でも、辛がっているんだ」 ベータは懇願した。 アルファは困った顔をした。 「オレはオメガが嫌いだ。酷い抱き方しかしねぇぞ」 そう言った。 それでもいい、と言った。 アルファは嫌そうに、でも引き受けた。 誰にも言うな。 秘密であることだけを条件に。 「愛してる。アイツだけなんだ」 結婚しているベータをアルファは愛していた。 「本当にアイツだけなんだ」 苦しそうに言う。 その意味が、ベータにはわかる。 「わかるよ。オレだってそうだ」 そう言った。 本能なんてものがなかったら良かったのに。 そう思いながら。

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