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第15話
発情期が終わり、まるでそんなことなかったかのように二人は過ごす。
あのアルファとは距離をおく。
互いに思い出したくないからだ。
でも。
また発情期がきたら、協力し合うだろう。
アルファは恐れている。
オメガを抱くようにベータを抱いてしまったらどうしようと。
本当に殺してしまうからだ。
だから、そうしないために。
抱けるオメガが必要なのだ。
だから発情期じゃなくても、アルファに【協力】することはあるかもしれない。
アルファが1番恐れているのは、自分のベータを傷つけることなのだ。
肉体的にも、精神的にも。
その衝動に耐えられなくなった時に、アルファはオメガを抱きに来るだろう。
愛するベータを殺す代わりに。
「毛の先程の傷もつけたくねぇ」
ポツンと言われた。
「わかる」
答えた。
「良く言うぜ、おまえらボロボロじゃねぇか」
アルファは鼻で笑いはしても、怒りはしなかった。
「どんなに傷ついても離れたくない」
そう言った。
「・・・わかるな」
アルファは答えた。
決して恋人のベータを傷つけられないアルファが。
立場は違っても。
分かり合えるのはたしかだった。
それでも幸せだった。
恋人がいたし。
色んな苦しみはあったけれど幸せだった。
なんとかやって行けると思っていた。
だが。
その日。
部屋に戻ると。
殴られ、裸にされた恋人と。
部屋の真ん中に椅子を置いて座っている、黒い服をきた見知らぬアルファがそこにいた。
アルファだとわかる。
巨体。
威圧感。
アルファ以外の何者でもない。
支配者である男。
誰なのかがすぐにわかった。
恋人のオメガが逃げ出した男。
恋人の番。
恐ろしいアルファなのだと。
「おかえり。私のモノを盗んでいたのは君だね」
その声は穏やかで。
でもおそろしかった。
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