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第22話
昼過ぎても空は青く晴れ渡っている、なんてイライラするのだろうか。何故、清々しいと朝は感じていたのだろうか。会社に戻った乙幡は機嫌が悪く、眉間に皺を寄せている。
「契約解除できてよかったですね。後は、悠さんと契約を結べばデザインは使えますから。さあ、展示会の準備しましょう」
長谷川が準備を進めてくれている。
思いの外、呆気なく和真との契約は解除となった。悠とこの後、契約を結ぶことも伝え、乙幡の家で一緒に生活することも和真に伝えた。
問題はない。なのに、何故こんなにイライラとするのか。
「ほら、嫉妬しないようにって言ったじゃないですか。感情的にならないようにというのは、まぁ注意していたみたいですけど」
「嫉妬?そんなものしてないだろ」
長谷川に突き放すように言う。
嫉妬とは和真に対してだろうか。ジェラシーなんてない。なのに何故こんなにイライラとするのだろうか。
「社長、和真さんに挑発されてましたよね?子供みたいなことだから、どうでもいいですけど」
そう、和真は優越感を含む言い方をした。恐らくそれは、乙幡に向けて言ったと思われる。
乙幡が「焼きそばくらい自分で作れ」と言った後、ボソッと和真は「あ…悠の焼きそば食べたことないんだ…」と呟き、チラッと乙幡を見た。和真と目が合った乙幡は上手く言い返せなかった。呟いたとはいえ、あの場にいた全員が耳にしていたはずだ。
「あーっ、言うな。あいつ、わかってて言ってたよな、煽るっていうか。イライラする」
「それ、ジェラシーじゃないですか?大人だから自分のことコントロールできるんでしょ?そんな顔で帰ったら、悠さんびっくりしますよ」
(くっそ…こんなことでイライラするなんて…ジェラシーなのか?)
そうだ。大人だから嫉妬なんてしない、感情はコントロール出来る。そう大きな声で乙幡は言っていた。
だけど実際は、好きな人の態度で一喜一憂するし、ライバルが出てくればイライラして潰してやろうと殺気立ってしまう。
器が小さくなったかと、自分自身に驚きガッカリしてしまう。こんな時どうやったら解決するのだろうか。
乙幡は悠にメッセージを送ろうと思い携帯を取り出す。しかし、何を書いて送ればいいのかと思い悩む。
「悠、大丈夫?って送ろうとしてませんか? 悠さんは大丈夫だから、そんなこと送らない方がいいです。さっさと仕事して早く帰った方がいいでしょう」
「へっ?何でわかった?っていうか、悠が大丈夫って何でわかるんだよ」
長谷川に気持ちを読まれて少しだけ動揺する。大丈夫?ってメッセージ送ろうとしたが、何が大丈夫だ?って思うだろう。悔しいが長谷川の言う通りだ。
「そんなメッセージより、社長は仕事している時がカッコいいって悠さんは思ってるはずです。だから、もっといつものように図太く、大きく構えてあげてください。それと今日、悠さんとの契約書持って帰って、サインもらってくださいよ。明日会社に持ってきてください」
「ニホンゴムズカシイネ、とりあえずスタンプだけ送るか」
仕事の話をしてくる長谷川に、ちょっと待ってねと手で遮り、送るスタンプの種類の多さにまた悩む。
深くため息をつき、ものすごく嫌な顔をしている長谷川だが、待っていてくれている。図太く構えろとついさっき言ったのはお前だろうがよと、乙幡は心の中で言い、そんな長谷川の態度は気にしない。
たくさんあるスタンプの中からやっと、『好き』ってスタンプを選び送った。気持ちよく仕事を再開することが出来る。
「展示会の準備に取り掛かれる。時間も限られてるから、スケジュール再調整したやつを報告してくれ」
乙幡の言葉と同時に駆け足で仕事が動き始める。
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