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第25話
最高だ。青く晴れ渡り清々しい日は、やはり最高である。と、二回も『最高』と心の中で乙幡は叫んでいた。
最近は仕事をかなりのスピードでこなしている。そして真っ直ぐ家に帰り、悠とイチャイチャ過ごす時間を多く取るようにしている。非常に効率的に動けていると感じ、充実している。これも日々晴れ渡る空のおかげだ。ありがとう。
ただ、悠が日に日にエロくなってくるのが問題だ。また乙幡はエディと呼ばれるとスイッチが入ってしまい、必要以上にねちっこく求めてしまう。
だけど、悠がひとりでしていたなんて聞いたら収まるわけがない。同じシャワールームでしてたなんて、そんなこと聞いたらシャワー浴びるだけでムラムラしてしまう。昨日もちょっとやり過ぎたかなと思うほど求めてしまった。
「エディ、唇噛んで」なんて言われたら、はいはいはいと心で返事をし、カブリと噛んでしまうのは男なら仕方ないことだろう。悠の下唇も上唇も柔らかく、気持ちがいい。
また噛まれた後の悠の顔がたまらなくエロい。あの顔が見たくてベッドの中では少々いじわるをしたくなる。
オーバーサイズの部屋着にも問題があると思われる。何であんなにすんなり脱がしやすいのだろうか。上も下も、するりと脱がすことが出来る。横からも上からも手が入りやすいため、イチャつく時は、すぐに乙幡の手が悠の服の中に入ってしまい、乳首やペニスを弄ってしまう。尻なんて触りたい放題だ。つるつるで、すべすべの悠の尻を触っていると乙幡のペニスはすぐに天を向いてしまう。
服の中を弄る感じがまたエロいのだった。身体にピッタリした服も見てみたい気がするが、直接肌に触りやすいのは今の服だろう。今後の服の展開が悩ましい。
「今朝も盛大にニヤけてますね…」
長谷川の声が聞こえる。放っておこうと思う。
「そういえば、長谷川。悠の服や日用品を揃えたのはお前だよな」
どこで購入したか今後の参考にしようと乙幡は思い長谷川に聞く。
「ああ…そうですけど、何かありましたか?」
「いや、外に出かける時の私服と、部屋着とのサイズが違うなって思ってさ。どこで揃えたのかなって」
答えないので長谷川の方を見ると、ニヤニヤと笑っていた。正直、長谷川が笑っているのは怖い。それに最近はこんな感じの空気になることも多く、なんだろっかとは感じていた。
「なんだよ…」
乙幡が睨みながら長谷川に言うと、更に笑っていた。正直、怖い。
「遅いですね。普段の社長ならもっと早く気がつくと思いましたけど。恋って怖いですね、自分達以外が見えなくなるって本当なんですね。私も気をつけます。毎日、そんなニヤけた顔するのも恐ろしいですし…」
「はぁ?なんだ、お前…っつて!あれか!お前、わざとか?仕掛けたな!」
気がついた。今、そうたった今乙幡は気がついた。長谷川からの仕打ちだったことを。
悠の私服はパーフェクトフィット、部屋着はオーバーサイズ。やっぱり何か変だ、おかしい、違和感がある。そして、長谷川ほどの男がその辺のことを間違えるはずは無い。
そうだ。わざと部屋着をオーバーサイズにして渡してしたのだと気がついた。長谷川は、乙幡と悠がこうなることを予想していた。悠は多少大きめの服でも、自分から言い出すことはせず、そのまま着るはず。きっとそれも長谷川の計算のうちだ。だから悠の部屋着をオーバーサイズにして、視覚的アプローチをし、乙幡を煽るために仕掛けたんだとわかった。
そして、きっと乙幡と悠がもう恋人同士になっているのも、長谷川にはわかっているはずだ。
「まあ、私には何にも得なことありませんけど、社長が毎日楽しいようでなりよりですよ」
長谷川はまだクククっと笑っている。乙幡の驚いた顔が可笑しいようである。
(こいつ俺で遊びやがった…ま、いいや。これからは無駄に絡んでやろう。そうだ、笑ってる顔を水城用の写真として撮っておこう)
隠れて携帯で長谷川を数枚撮っておいた
「では、社長。そろそろ時間ですので、社内会議行きましょうか」
長谷川に上手く転がされ、社内の打ち合わせ場所にエレベーターで降りていく。
展示会の打ち合わせがメインであった。
各担当者から報告と進捗の説明があり、順調通りに進んでいると感じる。
「広告デザインも無事に決定したので、展示会の日と同時にポッシュシリーズを販売開始とします。今回の展示会は、各ブース毎に写真撮影OKにしています。恐らく参加する企業はほぼSNSで拡散をするでしょう」
「うちは?どうなんだ?」
「もちろんやる予定です。SNSアップするチームも連れて行く予定です。ポッシュシリーズの発売も同じ日なのでその辺も狙ってます」
「わかった。順調だな。アメリカからの家具は届いたか?どうなってる?」
「無事届いてます。ジュエの倉庫に保管中です。こちら問題ありません。展示会場の配置を現在調整しています」
「OK、ありがとう。成功させような。君達のセンスと技術に支えられてるよ。頼もしい限りだ」
社長への報告は以上のようだ。乙幡が皆に感謝の言葉を伝える。
全て順調に動いているのは優秀な社員のおかげだ。もう何回目かになる展示会や新商品売り出しも、社員のセンスと技術で成功している。そうやって、確実にジュエの名前を大きくしていっている。
展示会後の展開を考えるため、席を立とうとした乙幡に社員から声がかかる。
「社長、この前のロッキングチェアですけど、その後届きましたか?」
腕のいい職人がいる工場が閉鎖になりそうなところをジュエが買収して、傘下に入れていた。そこの職人に無理を言って乙幡は専用のロッキングチェアをオーダーしていた。
「家に届いてるよ。週末はロッキングチェアで映画見たりしてるし、快適だからそこで寝ちゃうこともある」
「そっちの企画も考えてるんですけど、あの工場については難航してます」
「なんで難航?あそこは、工場広いし、別のシリーズを展開させる予定じゃなかったか?ロッキングチェアは作っても需要ないだろ」
社員からの新しい話題が出たので、乙幡は座り直す。
「それが、中々展開出来るシリーズが無くて…工場は広いんですけど、他の物はやっぱり海外で生産する方が効率的で、コストもかかりません。海外に比べるとあそこは広さも中途半端な感じで…職人の腕は確かなのでオーダー物だといいんでしょうけど、大量生産向きではないのでちょっと、どうしようかと…」
「そうか、場所を遊ばせておくのもな…
とりあえず、今は展示会が先だ。よろしく頼む」
席を立ち、長谷川と共に社長室まで戻る。展示会の準備は順調だが、ロッキングチェアの工場は難航。難航の方に、何かアイデア無いかなと考えながら携帯をいじる。
「長谷川、あの工場ってここからどれくらいかかる?遠い?」
「車で二、三時間くらいでしょうか。そんなに遠くはないでしょう」
「今週、空いてるところで行ってみようかな。とりあえず今は何も考えてないけど、行くだけ行って見てくる」
「そうですね。調整しましょうか?」
「仕事じゃなくて、プライベートで行く。悠も連れて行こうと思う」
「承知しました。すぐに調整します」
悠とデートだ。そう思うと急にワクワクしてくる。車で遠出するなんて初めてである。最近は近くのスーパーか、たまに外で食事くらいなので、喜ぶはず。それに、あのロッキングチェアを作ったところも一緒に見てみたい、そう乙幡は思っていた。
「明後日どうでしょうか。何なら一泊でもいいですよ。近くの宿取りましょう」
「一泊!すぐ悠に連絡しないと、あっ悠の仕事はどうだろう大丈夫かな。電話して聞いちゃおうかな」
「悠さん今仕事中なので、電話連絡はやめてください、びっくりしますから。明後日ですが、その日であれば悠さんは大丈夫です。その次の日は夕方に仕事がありますので、昼までに帰宅出来れば問題ないでしょう。オンラインでの仕事なので、最悪外出先からでもいいですけど、悠さんはきっと家からじゃないと嫌がると思うんですよね。そういうところ、きちんとしてらっしゃいますので」
「なんで悠のスケジュールまで把握してんだよ。こえーな。ま、いいかそれで任せる。泊まるとこ取れたら教えてくれ」
「承知しました」
まさか長谷川の奴、家の中にカメラとか仕掛けてないだろうなと思ったが、見られても何も問題ないしと開き直る。
家に帰るのが楽しみだ。初めての遠出だし、悠と一緒に行けることに幸せを感じる。とりあえずメッセージだけ先に入れておこうと乙幡は携帯を取り出した。
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