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第36話

途中大きく予定変更をしたので、時間に限りはあったが、皆が動いてくれたおかげで、完璧にセッティングが終了した。 今日から二日間展示会が開催される。 家具とインテリアの展示会なので、ブースの数も多い。企業やバイヤーなど、その関係者らが多く来るだろう。 乙幡は長谷川と共に現地に入る。ジュエのブースはかなり奥の方だった。入り口からは離れているが、長谷川曰く、場所に大きな問題はないとの事であった。 入り口近くには八雲家具のブースがあった。広告デザイン同様の可愛らしいディスプレイだ。目を引くのはもちろん、入り口近くなので多くの人が立ち寄るだろう。 八雲家具のブース前を通り、ジュエのところまで来た。美術館のようなディスプレイに圧倒され乙幡の足が止まる。 ポッシュシリーズのソファとロッキングチェアが展示されている。全体的に黒をベースとしたシックでフォーマルなジュエの世界観を作り出していた。 家具は白で揃え、上からアールヌーボーのゴールドフレームが吊るされている。 フレーム越しに見るソファやロッキングチェアは、悠がデザインしたそのものだった。 パンフレットには、寝ている女性やキスをするカップルなど、モデルが入っているが、展示会会場では家具だけ配置されている。シンプルだけどゴージャスだ。 床に数カ所の印を見つけた。なんだろうと近づいて見るとメッセージが書いてあるのがわかる。 『あなたは何を想像する?』 と、書いてある。また、別の場所の床には『贅沢な日常』とある。 それぞれ英語で書いてあった。 「これ、何だ?」と、床の印を会場スタッフに尋ねると「ここに立って写真を撮るとパンフレットと同じような写真が撮れるんです」と教えてくれた。 印の所に立ってみるとわかる。フレームの中にソファが収まり絵画のような写真が撮れるということだ。 「この展示会は写真撮影OKなので、ソファやロッキングチェアに座り撮影も出来ます。SNSにアップするのも許可しているので、ブーススタッフが誘導する予定です」 SNSを活用することは重要な戦略だ。知名度のアップにはなると考えている。なるほどな、今回の展示会でのルールを使うってわけかと乙幡は頷く。 「そうか、ありがとう。アテンド体制を固めておいてくれ。それと、来場してくれた顧客に対するフォローアップも頼む」 「社長、そろそろ」 長谷川から声がかかる。今日は展示会の初日であり、ジュエの新商品であるポッシュシリーズの発表日でもある。 今回は派手にやってやろうと、乙幡はメディアへのインタビューなど予定していた。これから昼過ぎまで数社の取材が入っている。 以前、雑誌のインタビューを受けたことがあったが、その時は容姿を褒められてばかりで家具や会社の話は二の次だった。そんな悪い印象があるので、乙幡はずっとメディアに出るのを拒んでいた。 今回は喧嘩を売られている以上、全ての媒体を使ってやり、新商品のアピールをするつもりだった。 「さあ、社長行きましょう。あんまりイラつかないよう、お願いします」 「わかってる。会社の評価を下げるようなことはしない」 「スムーズに取材が進めば、夕方ここで悠さんに会えますから。悠さんは昼過ぎに来るそうですよ」 長谷川に上手く転がされてる気がするが、悠に会えるのであれば、スムーズに進めるよう自ら努力しよう。成功し、悠を安心させたいと思っている。 __________________ 水城と、銀座の改札で待ち合わせをした。銀座の改札通って展示会会場まではすぐだった。 駅のコンコースの柱にジュエの広告デザインが映し出されている。悠が手がけた絵画のようなデザインだ。 「悠、これ…」 「すごい…ね」 二人は唖然として見上げてしまった。 改札近くの柱には、デジタルポスターとして、スクリーンになりジュエの家具が映し出されている。悠が手がけた複数枚のデザインが、スライドされ移り変わっている。壁一面には、大きなポスターも貼り出されていた。 ソファで寝てしまった女性、ロッキングチェアでキスをするカップル、悠のアイデア、デザインが駅の改札全体をジャックしているようだった。 既に足を止めて携帯で撮影している人もいた。ロッキングチェアが映るまで待ってるという声も聞こえてきた。 「駅の改札が美術館みたいになってる」 水城が興奮した声を出していた。 今回の展示会は一般客は来場出来ず、関係者のみとなるため、一般の人には駅のコンコースや雑誌でジュエの新商品を見てもらうと聞いていた。これも乙幡の戦略だった。 「悠、写真撮って乙幡さんに送れば?」 「あっ、うん、そうだね。何かびっくりしちゃって」 数枚写真を撮りそのまま乙幡に送った。 「乙幡さん、やるね。大人の怒り爆発って感じ?」 「やっぱりまだ怒ってると思う?」 「怒ってるでしょ。和真だけじゃなく、八雲家具だって全く知らないわけじゃないんだろうし、ある程度ジュエの動向わかってて、同じようなのぶつけてきてるんだからさ。きっちり仕返しするつもりだよ。正面から勝負してぶっ潰してやるって感じ?社長自らメディアにも出る予定でしょ。すごいわ、敵に回したくない人だわ」 銀座の駅とそれ以外数カ所同じように デジタルと紙のポスターがディスプレイされていると聞く。 展示会会場の方も更に楽しみになってきていた。

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