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第41話

疲れた。 朝からテレビ出演し、バタバタとした時間を過ごした。今はもう出演が終了したので、テレビ局を出て、家に帰る車の中だった。 「もうテレビには出ないぞ。疲れる」 「社長、がんばりましたね。反響すごいですよ。SNSでも絶賛されてます」 ほら、と長谷川が携帯を見せてくる。 そこにはテレビ出演した時の乙幡に対するコメントが埋まっていた。 イケメンから始まり、恋人羨ましいなどが書いてあった。ジュエや家具ではなく、乙幡に対するコメントが多くある。 「ほらな、家具のことじゃなくなるだろ。だからもう出ないからな」 テレビの演出上から、面白おかしくする方向に動くため仕方ない。会社の宣伝には、雑誌媒体の方がまだいいだろうと、乙幡はため息をつく。 「でも、ほら、こことか…ロッキングチェアが凄く注目されています。ショールームで展開したら尚更注目されますよ。工場にも連絡してありますので、準備万端です。さあ、売りましょう」 ロッキングチェアは意外な反響だった。 最近の生活スタイルに合っているのかもしれない。外に遊びに行くより、家でリラックス出来る時間を過ごす人が多くいる。それであれば、あの椅子は最高に心地が良い。 ふーんと、再度携帯に目を落とし、眺めていると別の言葉も見つかった。 『怒られちゃうだって!』 『恋人に怒られること言ったんだよ』『あんな顔でダメって言われたら許しちゃう』 と、続いている。 テレビを見ている視聴者が、コマーシャル中、何を言って盛り上がったのだろうかと気になっているということだ。 更に、『豆腐の味噌汁』も急上昇ワードに入っていた。 「コマーシャル中に言った事が、こんなに反響を呼ぶんですね。悠さんがテレビ見てたら何て言うでしょうね」 「ええっ…何て言うんだよ、悠は!」 コマーシャル中、乙幡の恋人の話になっていた。一緒に住んでる生涯のパートナーがいると言った乙幡に、コメンテーター達が「かわいい?」など聞いてきたので、「ものすごくかわいいですよ」と、答えていた。 それから?と色々聞かれたので、「かわいくて、素直で、それからめちゃくちゃ色っぽい」と答えてしまった。 その言葉を、男のパーソナリティが拾い上げ「あーわかる。そういうのいいですよね」や、女性コメンテーターも「女でもちょっとエロい男はいいと思うもん」などと皆口々に言うので「そりゃあ、もうたまんないよ。骨抜きにされてる」とため息混じりに言ったら、「何思い出したの?社長エッチだ」「社長、男はそうですよね」「エロいよ、社長」などと口々に言われ大騒ぎになり、そのままコマーシャル明けになってしまった。 「悠、見てたかな…」 「完全に見てますね。コマーシャル中に、色っぽくてたまんなくて骨抜きにされてるって、言ってたなんて知ったら、変態って思われますね」 「違う!色っぽいのが、たまんないって言ってない…ニホンゴムズカシイ…」 いつの間にかこんなに好きになってたな、たまんないなという思いでつい口走ってしまった。 (悠が知ったら、変態って思われるだろうか。まあ…変態なところあるしな俺) 聞かれたら素直に答えて、嫌な気持ちになっていたら謝ろうと思う。 マンションの地下駐車場まで辿り着く。渋滞に引っかかりもせず、スムーズに到着した。 「じゃあ、後で展示会行ってきてください。何かあれば連絡しますから」 長谷川はスケジュール調整などが忙しそうで、本社に戻ると言う。 「わかった。後は明日以降だな」 今日は悠と少しゆっくり出来るなと、気分が上昇しながら自宅までのエレベーターに乗り込む。 家に入ると、リビングで悠の気配を感じた。声をかけたら驚いて振り返っている。今から帰るよと、メッセージを送っていなかったのを乙幡は思い出した。早朝からの仕事が終わったので、そのまま自宅へ直行してもらったため、メッセージは送らずに車に乗っていた。 「ごめん、驚かせた?」 「だ、大丈夫。おかえりなさい」 「どうした?熱がある?顔が赤いぞ」 振り向いた悠が赤い顔をしていたので、心配になってしまった。連日の忙しさから熱を出してしまったのだろうか。 「ないない。熱はないよ、大丈夫。あ、ご飯食べる?お腹すいたよね?朝は、おみそ汁だけだったもんね」 エプロンを手に取りパタパタとキッチンに向かう悠を追いかけて、乙幡もキッチンまで入っていく。 「どうした?何かあった?」 後ろから抱きしめながら聞いても、何も答えない。でも、悠から拒絶する感じはしないし、どちらかというと機嫌が良いように感じる。横顔を覗くと、嬉しそうに微笑んでいるのがわかる。 「悠…こっち向いて」 正面を向かせた悠は、はにかむような笑顔を見せた。またキッチンの隅に追い込むようにして、キスをしてしまう。 キッチンではいつもそうだ。口の中を弄るように、身体も押さえつけてキスを繰り返してしまう。 「んんっ…」 キスをして鼻にかかった声を悠が出すので、乙幡は止まらなくなってくる。抱きしめている手を緩めず、更に身体を密着させる。 「展示会…行くでしょ?ほら、ご飯食べよう。すぐ作るから」 「ええっ、もうちょっといいじゃん」 「じゃあ…夜ね、夜に帰ってきたらね、ゆっくりしよう」 わぁかっった!と、乙幡は返事をしてスーツの上着を脱ぎ、キッチンで手を洗っている。悠はそれを見て笑っていた。 展示会の時間も限られており、また夕方に悠は塾の仕事も入っているので、昼だからといってゆっくりはしていられない。残念だと思うが、夜にゆっくりすればいいかと乙幡は考え直す。 「そういえばさ、テレビ見た?」 乙幡は少し心配になっていたので、悠にそれとなく聞いてみた。何て言うのかなと思っていた。 「見た、見たよ!エド、カッコよかった!凄くよかったよ」 思いの外、パァッと笑顔を向け、興奮気味で悠がそう言うので、ホッとする。ニコニコとしている悠は、嬉しそうだった。 「悠さ、もしかして、俺がテレビに出てるの嬉しかった?俺がそんなとこに出るのって嫌じゃない?」 「ええっ、嬉しいよ!何で嫌だと思うの?凄くカッコよかったし、ほら、ジュエの宣伝にもなっていたじゃない」 そうか…悠は嫌がっていなかったのか。嬉しいようでもあり、悲しいようでもある。 「俺、もう出ないよ。今回だけは長谷川にブッキングされてたし、仕方なくだけど。会社の宣伝なら雑誌とかでいいよ。テレビはもう無いかな」 雑誌、と悠が呟いている。何やら難しい顔をしている。 「雑誌もいいですね。今回も取材受けたんでしたっけ?これから発売?そっか、発売日チェックしておかないと…」 ブツブツと何か呟いているが、悠が嫌がってないとわかれば気持ちも晴れ晴れしてくる。 「じゃあ、銀座通って展示会まで行こうか」 二人で地下鉄に乗って展示会まで行くのも、デートのような気がしてきた。

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