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第44話

じゃあ行ってくるね、今日からニューヨークに出張だと、乙幡は行ってしまった。最近は特に忙しいようで、朝、顔を合わさずに出かけることもあった。 乙幡がニューヨークから日本に帰ってくる頃、悠はロサンゼルスに向けて出発しなければならない。またすれ違いの日々が続くことになる。 ご飯を食べる時間も、まちまちである。久しぶりに一緒に食べれるかなと思っていても、どちらかに急な仕事が横から入ってきたりしていた。 嬉しい悲鳴だよなと乙幡は言っていた。 そうだろうと思うが、やっぱり二人で過ごす時間も欲しいと悠は思ってしまう。 贅沢なことを考えているとも思う。 瀬戸と水城に助けられて、デザインの仕事を始めていた。クライアントとの打ち合わせ、ラフの提出など、以前和真がやっていたであろうことを何とか、二人と一緒にやっている。これから、ひとりでやる事も多くなってくるだろう。 乙幡にもメッセージアプリで常に報告し、アドバイスをもらう事もあった。とても頼もしい人だと改めて思う。 支えてくれた人に、仕事で恩返しが出来るようになろうと思えるようになったのは、やはり乙幡の存在が大きかった。 仕事の合間に、携帯の写真フォルダを眺める。隠し撮りしている乙幡ばかりだった。その中でもテレビに映った乙幡の写真がたくさん出てきた。その中のお気に入りを、待ち受けにしている。 いつも見ている乙幡と違い、会社の社長であり、自身の会社商品を胸を張って伝えている姿があった。真っ直ぐな姿勢が震えるほどかっこいい。 乙幡は自分のプランの中に、悠を入れていると言ってくれたことがある。こんなにかっこいい人の隣に立つのだから、恥ずかしくないよう、胸を張れるようにしたいとテレビを見て思っていた。 あまりに惚けてしまい、テレビ局からいつのまにか帰ってきた乙幡を見て、ドキッとして顔が赤くなるのが自分でわかったほどだった。あの時は放心状態だったので、後ろから声をかけられてびっくりした。 忙しい二人だからプライベートの時間を削られるのも仕方ない。わかってはいるが、ベッドの中で最後まで身体を繋げる行為が出来ていないことも気がかりであった。 最後までしてくれない理由はあるのだろうか。乙幡は優しいから途中で嫌になっても言わないだろう。もしかして、乙幡に無理をさせているのかもしれない。考えると不安になってくる。 乙幡とは以前、ローションを使い悠の後ろをほぐす行為をしたことがある。後ろに指を入れられ、擦られると悠はすぐにイッてしまった。それが癖になってしまいバスルームでひとり後ろを使いしてしまう時がある。乙幡が恋しく、身体が求めてしまうと言ったら、乙幡は何て言うだろうか。困ってしまうのだろうか。 本当はもっと強引にしてもらいたい。口に含む行為もあれからやっていないが、何度も考え、想像をしてしまう。エディと声に出してひとりでバスルームに籠るのは、虚しいが仕方がない。 乙幡と以前のような時間を過ごしたい。そしていつか最後まで身体を繋げたいという思いを、悠は抱えていた。

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