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第48話

男が二人で台所に入るとかなり狭かったが、それでも乙幡は気にせず勝手に調理器具を出している。 「焼きそば作るのに、何で千切りキャベツ買ってくんの?」 「キャベツ入れるんだろ?コンビニにはそれしか売ってなかったぞ」 和真は、信じらんねえとブツブツ文句を言っていたが、冷蔵庫からその他必要な具材を出していた。冷蔵庫の中には野菜も肉も入っているので、自炊しているのがわかる。 案外手際がいいなと感じる程、和真は慣れていた。常に料理をしているのだろう。その辺は悠に似ているのだろうか。 「悠はご飯作ってる?」 焼きそば麺を炒めながら、和真が乙幡に聞いてくる。横並びに立っているので、顔は見えない。しかし、その方が話しやすいのだろう。何となくそう感じる。 「作ってくれるよ。出てくるもの何でも俺の好みだ。小さい頃アメリカで食べてたものから日本食まで、色々作れるんだな悠って。それに可愛いし」 サラリと惚気てやった。 「これからも悠と一緒に住むの?」 「そうだな、生涯一緒にいようって約束してるし。だからお前、俺のことお兄ちゃんって呼んでいいぞ」 「嫌だね、絶対」 ふふんっと、乙幡は鼻で笑ってやった。和真を横目で見ると、ムッとした顔をしていた。よしよし、これくらい言っといてやっていいだろうと心の中で笑う。 焼きそばは、あっという間に出来上がった。簡単に作れるんだなと乙幡は和真の手元を見ていた。 「そこの皿、取ってよ」 焼きそばを入れる皿なんて見たことがないが、これでいいかと適当な皿を取って和真に渡す。うさぎの絵が描いてあった 「パンを買うとポイントが貯まるから、そのポイントでこの皿が貰えるんだ。悠、これ好きでよく貯めてたんだけど、知ってる?」 乙幡の知らない悠を教えられて、イラッとする。和真を見るとニヤッと笑っているから、わざと言っているのがわかる。 さっきの仕返しかよと、今度は乙幡がムッとする。でもまあ、ムカつくが、これがジェラシーなんだなと自分の気持ちを認めることが出来た。ジェラシーってやつを認めたら案外なんてことはなかった。今まで頑なにジェラシーを遠ざけていたのは何だったんだろうと可笑しくなる。 「うるせえな、早くしろよ」 乙幡がそう言うと、なんだよ勝手だなと文句を言うが、うさぎの皿に焼きそばを和真は盛り付けている。 キッチンの前にあるテーブルに座り二人で焼きそばを食べた。 「このキャベツなんだよ。紙みたいだな。お前、こんなのが好きなのか?」 悠の作る焼きそばが…と和真が言うから一度食べてみたかったが、どうもキャベツが紙のように感じて美味しくない。 やはり悠が作らないと美味しくないのだろうか。 「違うよ、千切りキャベツ買ってきたからだろ!普通は大きいキャベツを使うの。悠が作るとこんなじゃないよ」 「はいはい、悠は上手ですよ。せっかく作ったんだから、ちゃんと食えよ」 「俺が作ったんだろ!」 キャベツ以外は、まあ美味しかった。これで焼きそばを、今度悠に作ってあげられると乙幡は考えていた。 「お前、墓参り行ったか?」 焼きそばを食べ終えた乙幡が和真に聞くと、行ってないと答えが返ってきた。 「悠と俺はこの前行ってきた。悠が今、海外でエージェントと会ってるから、うーんっと、一か月くらい前かな。お母さんとお父さんに悠は報告してたぞ。これからデザインの仕事をしていくって。それと、和君を見守っててくださいって、言ってたぞ」 それを聞き、今度行くよと呟いているが、その後黙って下を向く。沈黙の後、和真が口を開いた。 「悠…海外行ってんの?」 「ああ、今はロサンゼルスだな。あれ以来、デザインの仕事が入ってきて、日本企業もだけど、海外からのオファーも多いみたいだ。忙しそうで心配だよ」 さてと帰るかと、乙幡は立ち上がり玄関まで歩いていく。 「悠に怒られるかな俺…もう会ってくれないよね、ひどいことしたし…」 玄関で和真が呟いていた。 「さあな。でも、今の悠は怖いぞ、はっきり物事を言うようになったから。厳しいこと言われて、泣かされるんじゃないか?まぁ…泣かされたら、お兄ちゃんに相談しろよ?何もしないけど、聞くだけなら相手してやるから」 「絶対、相談しない!」 和真がムキになっているのを見て、乙幡は笑いながらドアを閉めた。 悠に送ろうと思ってたのに、焼きそばの写真を撮るのを忘れてた。とりあえずまた、『好き』のスタンプは送るかと、考えながら帰り道をゆっくり歩いていた。

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