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第6話:奇襲

 入部以降、俺は授業のない時間、部室の窓際に座り込んでベースを膝に置き開放弦でボーンボーンと単音を鳴らしては、それが三津屋アキラを呼び寄せる呪文か儀式か何かのように空想しながら茫洋と過ごしていた。  水沢タクトの姿は数日見ていない。  あの後、上級生たちが色々質問攻めにして明らかに不愉快な顔をしていたが、でもどうも俺から見ると彼は何か目的があって軽音部に入ったように思えた。  それにしてもあの曲は凄かったな、もっとあいつの曲聞きたいな。 「おい! 水沢と三津屋が組むってよ!!」  昼休みの終わり頃、部室に駆け込んできた二年の先輩がそう叫んだ。  室内のメンバーはざわめき、 「やべーな! 最強タッグじゃん!」 「ベースとヴォーカルどうすんだよ」 「あの二人についていける奴なんていんのか?」 「三津屋が探し回ってるらしいぜ」  といった具合に騒ぎ始めた。  俺の心臓は、物凄い勢いで脈打ち始めた。  ベースとヴォーカルが要る。  三津屋アキラのドラムで、水沢タクトの曲——  どうしたら、どうしたら、どうしたら、入れる?  午後の授業の間もずっと『どうすればどうすれば』と考えるばかりで、具体策は何も浮かばなかった。

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