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第7話:想定外
放課後また部室に赴き、いつもの場所に座り込み、少し本気でベースを弾いた。数名が振り返った。ああ、歌いたいな。でもここではちょっと恥ずかしい。
やがて徐々に部員達が去って行き、それでも俺はまるで何かを待っているような気分で、窓際から動くことなく、ベースは膝に置いたまま、俯いてぼんやりとしていた。
「へぇ、ちっちゃいのに五弦なんだ」
声は頭上から降ってきた。
のんびりと顔を上げると、俺の顔面はぴしりと凍り付いてしまった。
三津屋アキラだった。
「俺、三津屋アキラ。ドラム叩いてる。きみ、いつもここいんね」
え、認識されてた?!
「えと、知ってるよ、三津屋くん。俺は須賀結斗。なんか、よ、用事?」
我ながら声が震えていないか赤面してないか不安だった。
「アキラでいいよ。よかったらリズム隊同士、ちょっと話さね?」
断る理由がどこにある?
俺は内心で狂喜乱舞しながら、あの三津屋アキラが俺を見てる、とか、あの三津屋アキラが俺に話しかけてる、とか、小学生ばりの反応を心中に押し込んでいた。
一階まで降りたので、てっきりどこか喫茶店かファミレスにでも行くのかと思いきや、三津屋アキラは、「あ、こっちこっち」と半地下に続く階段を指さした。
半地下に降りると、ほこりにまみれた廊下があり、ゴミや不要品が投げ込まれている中、ドアノブがいくつか並んでいた。
一番奥まで歩き、灰色の、おそらく中はもともと教室だったと思われるドアの前で彼は足を止めた。
「入ろっか」
三津屋アキラがカジュアルにそう言ったので、俺は素直に従い、ドアを開けて内部を見た。パイプ椅子や長机が部屋の半分を締めていて、電灯もつくか分からない。
こんな所で話すのか、もしかして三津屋アキラは節約家なのか、なんて一瞬気を緩めた瞬間、
「えっ!」
後ろからいきなりアームロックをかけられ、手前の壁に押しつけられた。驚いている間に、三津屋アキラの大きな右手が俺の両手首を軽々と握り、股に素早く膝をセットされ、俺は完全に動けなくなってしまった。
「つーかまーえた」
耳許でそう囁かれると、俺の全身に鳥肌が立った。
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