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第12話:その声は

「俺、おまえのこともっと知りてえわ」  互いに息も絶え絶えに後処理を始めると、アキラがぽつりと言った。 「キモくないの? こんな、やべーストーカー」 「い、いや、俺はむしろそれくらいの実行力とか長年好きでいてくれたとか、そういうのにめっちゃ弱くて……しかも俺のスティックで——」 「そ、それはもう言うな!!」 「分かったよ。でも、もっと知りたいわ、おまえのこと」  そう言う『聖なる性獣アキラさん』は、俯いてはいたが真顔なのが分かったし、もしかしたら本当に俺なんかに興味を抱いてくれたのかもしれない。 ——Rape me, rape me, my friend Rape me, rape me, again I’m not the only one ah ah I’m not the only one…  気づいたら俺はこんな曲を口ずさんでいた。  ニルヴァーナの「Rape Me」、なんか、そんな気分だったし。  しかし次の瞬間、アキラがばっと立ち上がって叫んだ。 「おい結斗! 今のおまえの声か?!」 「え、そうだよ。他にいないじゃん」 「おいおいマジかよ……」  俺にはよく分からなかった。  ただ、地声と歌声が違うとはよく言われる。  でもこれまではヴォーカルよりベースが楽しくて、ベース&ヴォーカルをメインにバンドを組んだことはなかった。 「すげえよその声。おまえ、ベースも同時にいけるか? ならタクトに紹介したい!」 ——はい? 「でも俺、歌下手って言われるよ?」 「そいつらはピッチの話だけしてる。確かに癖のある歌い方だけど、嫌みじゃない。何より本気で歌ってないのに、遠くまで届く声質だって俺には分かる。後でタクトと合流するから、その時一緒に来てくれねえか?」  え、え、もしかしてこれって作詞作曲水沢タクト&ドラム三津屋アキラっていう最強コンビのバンドに入れるかもっていうフラグ?! 「も、もちろん!!」  俺は直立不動で敬礼してまでそう応えた。

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