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第14話:年中さくら組の園児の名は水沢タクト
「フレンドウィズベネフィットとかワンナイトスタンドかセックスフレンドとか、まあ言い方は色々あるけど、バンド内でそういうのってどうなの」
近所のファミレスの四人席に落ち着いた俺とアキラの目の前に座る水沢タクトは開口一番そう言った。もちろん俺らは凍り付いた。
「え、水沢くん……? あのー」
「タクト、えと、何の話だ?」
「してきたでしょ。僕、そういうの分かる。匂いと声と息で」
嘘だろ……と俺は喫驚していた。多分アキラも同じだろう。俺は念入りにペーパータオルで全身を拭いたし、アキラも着替えてコロンを付け直していた。
「で、これからスタジオ?」
タクトは糸が切れたみたいに俺らの関係性に興味を失いそう言った。
「そう、タクト。こいつの声を聞いてやってくれ。すげえんだ!」
「俺も水沢くんの曲聴いて感動したんだ。俺ベースもいけるから、音合わせだけでも!」
「ん〜」
そううなったタクトは、メロンソーダをちゅるちゅると飲み、その後かなりの音量でゲップをした。
「声が良いからって僕の曲に合うかは分からないじゃん。それに僕はもう、人のために寄せたり合わせたり僕本来のテイスト以外の曲を書くのはうんざりなんだよ」
「だったら尚更だよ、タクト。こいつの声は聴く価値がある」
アキラが、あの三津屋アキラが俺の声を褒めてくれているのがにわかには信じられないが、そもそも二回寝ている時点で俺は今死ねと言われても喜んで死ねる。
だけど、俺は相当に欲張りのようだ。
水沢タクト。
こいつの曲を、他ならぬ三津屋アキラのドラムと俺のベース、そして俺の声で鳴らせるなんて、最高どころの話じゃない。
「んー、じゃあ条件出す」
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