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第15話:条件

 タクトは軟体動物のように上半身をゆらゆらと揺らしながら言った。 「もし三津屋くんと須賀くんが快楽だけのためにそういうことしてるんだったら今この場でそういう関係を断ち切って、バンドメンバーとしてちゃんとした仲間になること。もし違うなら、痴話げんかとかそういう面倒でバンド活動に支障が出るようなことは僕のあずかり知らぬところでやって。僕はただでさえ作詞作曲で君たちより仕事量が多い。もし僕にそういう面倒が降りかかったら、僕は容赦なく抜ける」  そう言い放った瞬間、虚空で揺れていたタクトの視線が俺とアキラを静かに捉えた。  正直、恐怖した。  幼稚園児(年中さくら組)がいきなり冷血無比な暗殺者になったような、まったく別人のような眼をしていたからだ。 「……俺らのことは、ちゃんと二人で良好な関係を築けるようにしたい。俺はもちろん、ってか絶対おまえと組みたいけど、だからって今この瞬間、結斗を切るほど軽薄でもない」 ——え。  あの三津屋アキラが、え? 何つった?  ぱっと顔を上げると、タクトは幼稚園児(年中さくら組)の眼に戻った。 「じゃあ行こっか。僕今お金ないから、後払いで良ければ」  言うがいなや、水沢タクトは百円玉を二つテーブルに置いてギターケースとエフェクターボードを担いで出口に向かった。ちなみにドリンクバーは三百五十円だ。

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