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第30話:REAL GUN FOXの挑戦 前編

「取れたぞ、LRハウス。Poppin’ Birds(ポッピン・バーズ)の前座」  部屋に入ってくるなり、アキラがあっさりと言った。    ◇  あれから1ヶ月半が経過していた。  俺たちは本当にアキラが言った通り、アキラの住むマンションの別室に、タクトの言葉を借りるところの『秘密基地』、またの名を『キツネさんち』を設けて、練習と、タクトが次々と作ってくる曲をセッションで形にしていく作業に没頭していた。  タクトにとって、それは人生で初めての経験であり、本人曰く、 「他の人の意見を聞いて僕の曲が変わるのって凄く楽しい!」  らしい。  そして俺らも、タクトの共感覚について、徐々にではあるが、理解していっていた。  ゴールデンウィークも関係なく『キツネさんち』で過ごし、そこで俺たち三人は、単なる演奏者三名ではなく、仲間、そして友人としても絆を深くしているように、俺は思っていた。  アキラが料理してもタクトが超絶偏食だったり、意外にも音楽以外の趣味として将棋が好きだということも発覚したり。  下ネタや恋バナ的な展開になった時も、俺は素直に中学の時好きだった女の子としたけど、凄く不快で、アキラに出会うまでは男性と関係を持っていたと素直に告白した。タクトはふーん、難しいねぇ、なんて深々と頷いていたが、アキラは冷や汗をかいていた。  タクトに話を振られたアキラは、腹を決めた様子で、経験数は多いが本気で交際してるのは俺が初めてで、関係性は良好だ、と断言した。それを聞いたタクトは、不思議な顔でアキラを見ていたが、しばらくして、ふーんふーん、と鼻を鳴らしていた。  そして、ぽつりと、僕はエイセクシャルかもしれない、と言った。音があればそれでいいし、それ以外に何も求めない、と。  タクトの視線が下がり、しんみりとした表情だったので、アキラが「いんじゃね? セクマイ・バンド、しかも三分の二はカップル」と茶化した。

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