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第39話:何が切って落とされた?

 一方で、そんな超絶技巧曲の作曲家は、またじいいいいいいいっと音がしそうなほどタケルさんを見詰め始めた。 「……んと、結斗くん、これも幼稚園児モード?」 「……お、おそらくは……」 「はい! ありがとーございます!!」    突然タクトが叫んだ。  俺とタケルさんはもうついていけない。 「嬉しいです〜、あの曲、ムジナ村の人たち全然弾けなくて、『もっと簡単にしてくれ』とかふざけたことを言ってきて、でも、も〜う、そんなの僕は許せなくて、サポート雇ってでも完璧に再現しろって言ったんです〜。それで完パケ上がってきた時にタカルさんのギター聞いてやっと満足できて〜」 「タカルな! タケルさんだ!」 「だから、凄く感謝っていうかありがとうです〜、うわぁ嬉しい〜!」  タクトは酷く興奮した様子で、ギターを置いて部屋中を縦横無尽に踊り歩いた。 「かわいいね、タクトくんも。それにこの表だけど」  タケルさんはタクトの共感覚を表す例の画用紙の方へと歩み寄った。 「ここまで来ると圧倒的だね。俺の倍はある」 「え」 「うん、俺もちょっと共感覚あるから。でもタクトくんのとはほぼ真逆の色合いだね。それに俺のは和音しか色が出ないし、こんな複雑なコードまで見えない。水沢タクト、本当に天才的だよ。アキラと結斗くんに巡り会えて、ようやく自分の音楽を形にできるようになった。ますます進化するだろうね」 「ターカルさん! ここでは結斗くんではなくユウくんです!!」 「ん?」 「だから彩瀬タケルさんだぞ! タクト!!」 「早弾き勝負、勝った方が勝ち!!」  タクトは相当テンションが爆上がりしているに違いない。  あの七弦SG使いのギタリスト・彩瀬タケルに早弾き挑戦状?! アホか!!  しかし俺が思わずタケルさんを見遣ると、彼は口角を嫌み無くきゅっと上げ、 「俺、七弦でいいの?」  と乗り気で応えた。 ——アキラ、早く帰ってきてくれ、お願いだ! 夜多少キツい体位でも耐える! このフリーダムな二人を止められるのはおまえしかいない!!! 「たーだいまー、あれ? タケ兄来てんの?」 「おう、今からタクトくんと早弾き勝負」 「へぇ、じゃあ俺カウントするわ。あ、結斗、ただいまー」 ——止めろや!!

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