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牡丹の闇 三

 しかも、今、ほんの少し先で異形の道具を体内に入れられ、苦痛にのたうっているのは、敬慕してやまない仁なのだ。  顔いじょうに、望は股間が熱くなってきたのをさとった。  古風な行灯のおぼろな明かりのなか、仁はそれこそくずれた白牡丹のように無残で、美しいのだ。 「あ……、ああ、た、たのむ、抜いてくれ」  仁は軍人に見えないとよく人から言われるし、望もそう思っていたが、剣道の腕はたしかだと父が言っていたことがあり、馬術などは陸軍では右に並ぶものがいないとも聞いている。けっして弱くはないはずだ。  優しい気性ではあっても、名家に生まれ育った者特有の自尊心や気位も、ふとしたときの表情や言動から感じられることもある。  それが今、いとこの手酷い責めを受け、あられもない惨めな姿を晒しているのだ。 「まったくなんというざまだ。尻に道具をいれられ、よがっているとは。貴様、それでも帝国軍人か?」  望はまた息を呑んだ。  あろうことか、勇は足で仁の臀部を蹴ったのだ。  いや、蹴るというより、押したといった方がただしいだろう。そう強く力を入れているようではないが、ひどく侮辱的な行為だ。 「うう……」  文字どおり、足蹴にされた仁は、不自由な体勢で、苦しげに首を左右に振る。  否定ととった勇の責めはさらに激しくなっていく。 「なにが違う? ほら、ここを、こんなふうにしているではないか?」  身をかがめ、手を伸ばして、勇は仁の股間をまさぐった。 「あっ、ああっ!」  泣くような悲鳴が、行灯によって染められた紅閨(こうけい)に響き、襖の前で立ち尽くしている望の鼓膜をとろかす。  驚愕がすこし落ち着いてくると、望は、勇の残酷な態度に怒るよりも、仁の哀れな様子に同情するよりも、べつの感情に胸をざわめつかせていた。  望の幼い股間はますます熱くなる。  祖父に弄られたときよりも、未熟な自慰の喜びよりも、はるかに激しい感興に我を忘れていた。  今、忠がしていることは、まさに妄想のなかで望がしていたことだった。

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