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第2話 プロローグ2
地面に靴で落書きを施す。
それは大したものじゃ無くて、ただのバツ印だ。
実に落書きらしい。
その隣にまる印を描いてみる。
綺麗な円が描けた。
うん、と顎を下に動かす。
それから僕は腕時計に目を落とした。
高校入学のお祝いにとばあちゃんが買ってくれた物だ。
黒皮のバンドの付いたアナログな時計だ。
時間を見るに待ち合わせ時間はとうに過ぎている。
なのに遠野は現れない。
自分から呼び出した癖に何だよ、と心の中で悪態をつく。
僕は目の前の桜の木を見上げた。
ほのかなピンク色に色づいた桜の花が水滴を帯びてキラキラと光って見える。
とても綺麗だった。
雨の恵みとは有り難いものだ。
しばらくの間桜に見とれていた。
するとこちらに向かって駆け足の音が響いて来た。
土を蹴る音は勢いがあって次第に大きくなる。
僕は音のする方に視線を移した。
校舎の角を軽やかに曲がる遠野の姿が目に映る。
「遅れて悪いっ!」
肩で息をしながら言う遠野。
ここまで走って来たらしい。
「コンビニ寄って漫画立ち読みしてたら時間を忘れちゃって」
僕が訊ねてもいないのに遠野は遅れて来た理由を述べる。
「別にいいよ。それより何?」
単刀直入に訊くと、遠野は、「こほんっ」と咳払いをして真っすぐに姿勢を正す。
僕の姿勢も思わず、シャンとなる。
遠野は僕の顔を真面目に見つめ、こう言った。
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