3 / 12

第3話 プロローグ3

「絶対に怒らないで聞いて欲しいんだ」  真顔でそう言われ、うん、と僕は頷く。  強い風が吹いて桜の花びらが、ひらひらと舞う。  僕と遠野の髪が風にたなびく。  まるで風の間を抜けるみたいに遠野が呼吸をしている。  スローモーションで上下に揺れる遠野の肩。 「好きだ」  大きく息を吸ってから吐き出された遠野のその言葉に僕の思考は一瞬停止した。  遠野が、着ている制服の裾を握りしめている。  そんな遠野とは真逆に僕の手は、脱力してぶらんと袖の裾から垂れ下がっていた。 「僕も遠野の事が好きだけど」  学校じゃあ、しょっちゅう、クラスで浮いている僕の面倒を見てくれる遠野。  家にもよく遊びに来てくれて親同士も仲がいい。  僕の友達は昔から遠野だけだった。  そんな彼に悪感情なんか抱いているわけがない。  幼馴染にしても遠野は僕にはもったいない友達だ。  僕の答えに遠野が首を振る。 「友達としてとかの意味じゃあ無いんだ」 「えっ?」  目の前がくらりとしたかと思うと次の瞬間には僕の頭に血が上っていた。 「何だよ。その冗談。僕の趣味を知っててそんなの……悪趣味にもほどがあるだろ!」  怒り心頭で遠野に向かって吠えた。  遠野は一歩後ずさり、「お前、怒らないって言っただろ!」とのたまう。 「言ってない!」と僕。  ただ頷いただけだ。 「お前がそんなやつだなんて思わなかった……」

ともだちにシェアしよう!