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第9話 十代最後の日になりました4

 遠野以外の人間をこの部屋に入れた事は無いが、知らない誰かがこの部屋に入って来たら間違いなく女の子の部屋だと思うであろう。  僕は子供の頃から物凄く、可愛い物が好きだった。  玩具もヒーロー物に出て来るロボットや男の子向けのゲームよりもぬいぐるみや可愛い動物を育てるゲームの方が良かった。  だから着せ替え人形にビー玉、おはじき何かを好んで買っていた。  可愛い物があれば僕は幸せだったしご機嫌だった。  そんなものだから子供の頃の僕の遊び相手は大体が女の子達と、そして遠野だった。  しかし遠野と着せ替え人形などで遊ぶことは全く無かった。  普通に探検ごっことか公園の遊具で遊んだりしてた。  遠野の家で格闘ゲームをしたり。  僕はそんな遊びはあまり好きでは無かったのだけれど遠野がいつも無理矢理僕を引っ張って男の子の輪の中に僕を混ぜて遊びに加えるのだった。  頭の中では買って貰ったばかりの着せ替え人形の服を早く人形に着せたい、と思いながら、鬼ごっこで万年鬼の僕は賑やかに声を上げながら公園を動き回る遠野とその友達を捕まえる為に走った。  着せ替え人形の事で頭がいっぱいの僕は中々逃げる皆を捕まえられなかった。  そもそも運動が大の苦手で走るなんて事をしたくなかったからやる気も無かった。  小学校の学年が進むにつれて、女の子の玩具を親が買ってくれなくなった。 「夕陽は男の子なんだから、もっと男らしい物で遊ばないと」と父親に言われて誕生日のプレゼントが着せ替え人形の服からミニカーに変わった時の悲しさと言ったら無い。  ミニカーなんていらない。  僕は着せ替え人形の服が欲しかったし、女の子達の間で流行っている木や苺の形をした家の玩具が欲しかった。

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