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第10話 十代最後の日になりました5

 でも、何故だかそれをその場で父親に言う事が出来なかった。  まるでミニカーを否定する事が物凄く悪い事のように感じたから。  何とか父親とその傍にいる母親の前でミニカーを喜んでいる振りをした。  その時の二人の花が咲いた様な笑顔は僕の心に違和感と共に残ったのだった。  この頃から僕の性格は少し暗くなっていった。  クラスメイトとあまり口を聞かなくなって、そうしているうちに相手にしてくれるのは遠野だけになった。  自分からクラスメイトと距離を取っている癖に正直、寂しかったし不安だった。  自分から皆に話し掛けたら良い事だとは分っていても何を話したら良いのか分からなくて話し掛ける事が出来ないのだ。  唯一、遠野とだけは意思疎通が出来た。  遠野が側にいてくれたから何とか学校に通えた様なものだった。  こんな感じで小学生時代を過ごし、中学に入った。  中学で遠野と同じクラスになった時は物凄く安心した。  その頃にはもう、僕は他人と一切会話が出来なくなっていたからだ。  クラスメイトと話す機会は日直の担当になった時とか必要な時だけで、今日の天気の話題すらしなかった。  僕は自分の内側に籠る様になっていた。  振り返ると中学の時が一番楽しく無かったな、と思う。  中学時代の僕の唯一の楽しみと言えば、中学になって、おこずかいが貰えるようになって、こっそりと小さなぬいぐるみや可愛いカプセルトイを買う事。

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