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第3話 濡れる喜四郎
(なに? お、おれがどうした?)
「す、皇くんはあっ、あんなにきれいで、みんなが憧れてて……和也様が、皇くんの、ど、奴隷にでもなったらあっ、ぼく、ぼくはっ……」
「ぼくは? どうなるんだよ?」
「く、苦しいですっ! 切なくて、悲しくて、おかしくなってしまうっ!」
「ははっ、なんだよそれ……そんなわけねえだろ、こんなに締め上げてくるいい奴隷がいるのに、おれが皇帝やめるなんて。……ほら」
「あっ!?」
また、喜四郎の声の調子が変わった。
「だ、だめです和也くん! それ、そこはだめえっ!」
「なんでだよ……お前が一番好きなところだろ……ほら、この先のところを、丸く……くるくる、くるくるって……」
「あ、当たってるっ! 当たってますっ!」
「当ててるんだよ……空……」
「だめですっ! ぬ、濡れちゃうっ!」
(濡れる……?)
沙羅衣はとうとう、そっと引き戸をスライドさせ、薄暗い教室の中を見た。
空き教室なので、椅子や机は前方にまとめて片づけられている。
ぽっかりと空いた教室後方のスペースに、二つの細身の影が立っていた。
和也が、喜四郎のピンクの後ろ髪に顔をうずめながら、後ろから貫いている。
そして和也の右手は、冗談のように反り返った喜四郎のペニスの先端にかぶせられていた。手のひらが、くるくると円を描くようによどみなく動き、そのたびに喜四郎の体がバネ仕掛けの人形のようにびくんびくんと跳ねる。
「ぬ、濡れるっ! 本当に濡れちゃうっ! 和也様あっ!」
もう和也は答えなかった。ただ、無言で激しく腰を前後させ、喜四郎を屈服させていく。
「ああああああっ!」
喜四郎のペニスが脈打った。
その先端から、びしゅっ、と音を立てるような勢いで、透明の液体がほとばしる。
「う……ああああ……」
かくん、と膝を折りそうになる喜四郎を、和也が後ろから抱えて無理やり立たせた。
「まだだぜ」
「ああ、う、うそおおおお……」
「うわあ……凄いですね、あの二人……」
沙羅衣のすぐ横で、同じように覗いていた一回生が息を漏らす。
「皇帝と奴隷なら珍しくないが、こんなところで……あいつら……」
釘づけになっていたことを自覚してほほを赤らめながら、沙羅衣はドアから離れた。
「い、行くぞ。あいつらも、飽きれば下校するだろう」
「皇先輩。ぼくでよければ、お相手しましょうか」
「……なんの話だ?」
「分かっていますよ。今、先輩が、どんな状態になっているのか」
赤面を強めて、沙羅衣が咳払いした。
「そ、それは、あんなものを見れば誰だって」
「そうです、誰だってそうなります。だから、ぼくが落ち着かせて差し上げますよ」
一回生が、すっと身を寄せてきた。
「……どういうつもりだ」
「ほら、教室の中に聞こえますよ。そっちの部屋も空き教室ですよね。移動しましょう」
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