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第5話 人の手を知らなかったのに

 完全に充実してしまった、まだ人の手を知らないペニスが、黒いボクサーパンツを激しく押し上げている。  枢流が、それを優しく握った。 「はうッ……」 「直接、触ってほしいですか?」 「やめ……ろ……」 「こんなにしておいて、まだそんなことを」 「おれが……奴隷を作らないのは……家のことだけじゃない。皇帝と奴隷という慣習に、反対だからだ。なぜ、そんな愚昧な身分制度を、この学校の中に……作る。友人は、たとえ先輩後輩であっても、立場は」  する、と枢流の手が動いた。 「あっ!?」  指先がボクサーパンツの中に忍び込んでいた。  生身のペニスに触れるまで、あと五センチあまり。 「く……ふ……」  あと一センチ。 「ううッ……」  あと数ミリ。  敏感な内ももの感覚に、沙羅衣の思考が止まる。 「凄い……ぼくの指が近づくと、先輩のが、びくんびくんて動く……」 「祠堂っ……し、どう、やめ……」 「声を出さないでくださいね」  ぎゅんっ。 「あッ!?」  枢流の手が、一気に侵入し、沙羅衣の先端を手のひらでくるんでしまった。  いきなりの展開に、沙羅衣は完全に翻弄されてしまう。 「ああッ!」 「皇先輩、しっ。人が来ますよ」  そんなことを言われても、未経験の、そして最も脆弱な部分に突然最大級の刺激を与えられ、我慢などできるわけがなかった。  枢流自身、握力を強めにして、あまりにもろい剝き出しの先端を遠慮くなくいじめ出す。  きゅるきゅるッ。 「ああっ! ああっんッ! し、しど、あああああっ!」  沙羅衣の膝と腰が折れ、床にくずおれてしまう。  それでも、枢流の手は止まらなかった。  一方的な強烈すぎる刺激からなんとか逃れようと、沙羅衣が身をくねらせる。  だがその動きを的確に追いかけて、枢流は執拗に、休みなくたなごころによる拷問を続けた。 「ど、どうしてえええっ! 祠堂っ、やめてく、うううううッ!」  刺激が強いせいもあるのだが、それよりも、まったく途切れずに、未知の快感が次々に性器に叩き込まれてくる感覚がたまらなかった。  沙羅衣は、快感の裏に、恐怖に近いものを感じていた。  このままいつまでも続けられたら、自分はどうなってしまうのだろう。 「分かってくれましたか? ぼくが、先輩を、どんな気持ちよくできる人間か。契約の前に、その中身の材料を見せておかないとフェアじゃありませんから」 「わ、分かったっ! 分かったから、一度、一度やめええええ!」 「本当に分かってくれました?」  しゅるしゅるしゅる……  肌と粘膜がこすれるそんな音に、だんだんと、水音のようなものが混じりだす。  ちゅにちゅにちゅに…… 「だ、だめだ、もうっ! ぬ、濡れるっ!」 「濡れる? さっき、あの先輩がそんなこと言ってた時は、皇先輩きょとんとしてたじゃないですか」 「わ、分かったんだっ! か、体の奥から、なにかが出て……濡らしてしまうっ!」 「耐えてください。ここ、教室ですよ?」  今や、摩擦音はすっかり水音に変わってしまっている。  今にも堰を切って決壊しそうな、この美しい男子の限界の様を、枢流は背中に走るぞくりとした快感とともに見下ろしていた。 「だ、だめええっ! 凄く、凄く濡れてしまうッ! いっぱい出るッ!」 「射精ですか? いっぱいとは、剛毅ですね」 「ち、ちがあああっ……あっ……」  びしゅうッ! 「ああッ!」  パンツの中で、枢流の手のひらに、弾丸のように鋭く水流が当てられた。  びしゅっ……びっ……  水流は緩やかになり、やがて絶えた。 「あ……はああっ……」 「先輩、濡らしちゃいましたね……ああ、スラックスまでびしょびしょだ……」 「こ、んな……なんて……こと……」  かちかち、と沙羅衣の歯の根が震えて音を立てる。 「先輩、分かってます? まだ、先輩がガチガチのままだってこと」 「え……?」  枢流の手で撫で上げられてようやく、沙羅衣は自分が激しく勃起したままだということに気がついた。

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