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第13話 指

 枢流はかたわらにあったシャンプーのボトルを手に取ると、液体を出して手に乗せた。 「なんだ、洗ってくれるのか?」 「分家のものですから」 「そんなものに構うなというのに」 「……本当にきれいな髪ですね。皇家、代々の特徴ですよね」 「必ず銀髪になるわけではないがな。現に、おれの祖父は光沢のない灰色の髪で、ずいぶん嫌なことも言われたらしい」 「そういうところがいけすかないところですね、名家というやつの」 「ふふ。そうだな」  枢流の手が、しゅわしゅわと洗髪を開始する。  以前から手馴れているのか、マッサージを兼ねたような動きに、沙羅衣は次第にうっとりとした気分になってきた。 「かゆいところはございませんか?」 「ああ、ないよ。上手だな」 「しゃべると口に泡が入りますよ」 「こいつ……」  シャワーを頭からかけて泡を流すと、今度は個体石鹸を枢流が泡立て、その手で沙羅衣の背中に触れた。 「……体まで洗ってくれるのか?」 「ええ。もしかして、いやらしいことをかんがえておられますか?」 「……考えそうにはなったが、考えてはいない」  はたして、枢流の手は、特に含んだ動きをすることもなく、首、胸、脇、背中、腰……と手際よく洗体を進めていった。  一瞬だけ、性器やその奥を指先が通って行ったが、これもあくまで洗うだけで、すぐに通り過ぎて行った。  しかし。  足指まで洗い終わった後、泡まみれになった沙羅衣の体の一部分は、激しく自己主張を行っていた。 「……なんでそんなになっちゃってるんですか……。一日どころか、中庭から半日もたっていないのに……」 「し、仕方ないだろう、これは。少しだが直接触られたし、その手はおれをあんなにした手なんだ。多少の反応は、……する」 「多少ですか、これ……?」  枢流が、後ろからすいと手を伸ばした。  その掌が、遠慮なく、怒張した幹をつかむ。 「うっ……」 「全開じゃないですか……。ぼく、もう分るんですよ。先輩がどれくらい興奮したら、どれくらい大きくなるのか……」  しゅち……しゅち……  枢流が柔らかく握ると、それを跳ね返すように怒張が反発する。  その状態で上下にしごかれると、沙羅衣はたまらない。 「よ、よせ……動かすな。おれは、そんなつもりじゃ」 「ふふ。泡、気持ちいいですね……」  それはたしかだった。  ただでさえ絶妙の力加減で愛撫してくる枢流の手に、泡のぬるぬるとした感触が加わると、これまでになく官能的な快感が生まれる。 「ぼくも、こういうつもりじゃなかったんですけど。本当にいいんですか、射精しなくて」 「い、いい。これはさすがに一過性のものだ。すぐにおさまる」 「そうですか。それじゃ……」  つぷ……  自分の体に何が起きたのか、とっさには沙羅衣には分からなかった。  ただ、生まれてから一度も、自分の体だというのに触れてこなかった部分に――触れてはならないはずの部分に、なにかが触れてしまっている。 「くる……る……」 「本当は、石鹸が中に入ると大変なんですけどね……さすが、ここの石鹸は、こういうことにも対応しているみたいです。いや、むしろそのためにこの石鹸を仕入れているのかな……お風呂の清掃は、生徒がやっているんでしたよね……ならそれにかこつけて、誰かしらの皇帝か奴隷が……こんなふうに……」 「な、なにを言っている! ぬ、抜けっ! 抜いてくれ!」 「だめです。……むしろ、もっと入れます。奥まで……」 「く、枢流っ! いけない、それ以上はもう!」

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