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第14話 一番好きなことをしてあげる
「まだ、指先だけですよ。これからですよ、ほら……」
ぐ……
「あ……」
初めてペニスをつかまれた時も、相手に対抗しようという意思は、一気に薄弱化していってしまった。
だが、無防備な穴に指を突きこまれていく感覚は、それよりもはるかに即効的に、沙羅衣を無力化していった。
「先輩、処女ですよね……?」
沙羅衣は、体内を侵食されながら、がくがくとうなずく。
「なら、これを、忘れない思い出にしてくださいね……本当は入れたいけど、いきなりは無理だから……」
くにくにッ
「はあっ!」
指先を中でかぎ状に曲げられ、自分でも知らなかった弱点が直接的に攻撃される。
「行きますよ……」
なにを? と聞こうとしたとき、沙羅衣の目には、もう見慣れてきてしまっている、ペニスに向かってそろそろと伸ばされてくる枢流の手が映った。
まさか。
前後、同時に?
いけない。
ペニスだけでもあんなにあっけなくいかされ、後ろだけでもこんなに簡単に手玉に取られてしまっているのだ。
今、あの、敏感な先端のくびれを剥き上げるような動きをされたら、どうなってしまうのか。
沙羅衣が抱いた不安とは裏腹に、ペニスは泡を跳ね上げて、激しく脈打つ。
「ふふふ……そうですよ……先輩が一番好きなこと、してあげますからね……」
「や、やめ……」
「あ、皇くん。お風呂?」
浴室の外、すりガラスのガラス戸の向こうから響いてきた声に、沙羅衣のみならず枢流も驚きの叫び声をあげずに済んだのは、ほとんど奇跡に近かった。
「も、本村!? もう戻ったのか!?」
どうして!? と言いそうになるのを、すんでのところでこらえた。そう言ってしまえば、せっかく与えられるはずだった快楽が中断されてしまった不満の色が言葉にこもるのを、止められそうにない。
「今日の作業はだいたい済んじゃってたんだ。まだ文化祭は先だし、進捗はじゅうぶんだから」
「そ、そうか」
「さっき一緒にいた子は帰ったの? 遅くなっちゃうもんね。あー、もうおれも入ろうかな、風呂」
そう言って、本村が服を脱ごうとする気配が伝わってきた。
「ま、待て! 待ってくれ!」
「え? なんで」
今ガラス戸を開けられたら、タオルや手でどう隠しても、限界までいきり立った部分を見られてしまうだろう。
沙羅衣が、この場で通用しそうな言い訳をなんとかひねり出そうと、頭を回転させる。
しかし、その回転が簡単にストップしてしまう事態が、下半身で起きた。
はむッ
そんな音とともに、特に痛いほど張りつめていた先端の部分が、柔らかくいたわるような感触に包まれた。
ただし、恐ろしく圧倒的な、淫靡な快感を伴って。
沙羅衣のそれは、すでに全長の三分の一ほどを、枢流の唇の中に飲み込まれていた。
沙羅衣は、やめろ、と言おうとしたが。
ぬる……
その感覚が前後に動き始めると、もう言葉にならなかった。
食いしばった歯をゆるめれば、隠しようもない喘ぎ声がもれてしまう。
沙羅衣は、両手で枢流の頭をつかみ、引き離そうとした。
だが、その手に込めた力さえも、枢流の唇が敏感な段差を行き来するだけで雲散霧消してしまう。
沙羅衣ののどが反り返り、背中が突っ張る。
生まれて初めて味わう快感に、腰が砕ける寸前だった。
「……皇くん?」
その声で、かろうじて沙羅衣は正気に返った。
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