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第15話 もうあなたを好きなようにいかせられる
沙羅衣は、脱衣所のガラス戸に背を向けて立っていた。
そうでなければ、本来よりも大分低い位置で揺れ動く、黒髪の影が見えてしまっていただろう。
「もと……むら……」
「もしかして、なにかあったの? あ、けがしてるとか?」
「ち、ちがう……なんともない、から……今は、こない……で……」
「どうしたんだよ? 開けるぞ?」
本村の手が、ガラス戸の取っ手にかかるのが見えた。
沙羅衣の中に入りっぱなしだった枢流の人差し指が「止めてください」と言わんばかりに、くいと曲げられた。
(こ、こいつっ!)
「だめだッ!」
「え、ええ?」
沙羅衣が、最後の忍耐力をつぎ込んで、静かな声を出す。
「実は今……おれの体には、人には見せられないような、恥ずかしい有様になっているところがあって……それで一人で入浴していたんだ。だから武士の情けと思って、どうかあと数分だけ、風呂に入るのは待ってくれ……」
うまい言い訳が思いつかないのなら、いっそ丸ごとけむに巻くしかない……と判断したのだが。
どうやら、本村には効果があったらしい。
「そうなんだね……ごめん、おれ、デリカシーがなくて。ちょっとその辺を回ってくるよ」
「す、すまない……」
「ううん。ゆっくり入ってね、皇くん。ほかの人も来ないように、見張っておくから。あ、離れたところからね」
そういって、本村の気配が遠ざかっていく。
沙羅衣の胸には、罪悪感が湧き出していた。
「うそをついてしまった……」
「そうですか? うそじゃないでしょう、だってほら」
れろん、と枢流の舌が沙羅衣の裏側をなめ上げる。
「あうッ!」
「先輩、こんなに、恥ずかしくなってる……」
そして、前後同時のの愛撫が開始された。
くい、くい、くにッ……
ちゅむ、ちゅむ、ちゅむ……
口の中をすぼめ、沙羅衣の過敏な粘膜への圧力を強めて、枢流の頭の動きが早まっていく。
未開発のため、まだ明確な快楽を生み出すほどではない後ろも、この状況ではかつてない興奮を沙羅衣にもたらしてくる。
「あっ、あっ……ああああっ……」
沙羅衣は、自分の下半身に吸いつき、信じられないような快感を送り込んでくる一回生を見下ろした。
粘膜を粘膜でしごかれるのが、こんなにすさまじいとは、想像していなかった。あたたかく、なめらかなのに、与えられる触感は容易に未経験者を打ちのめしていく。
思わず、自分から腰を枢流ののどの奥へ打ちつけてしまいそうになり、それを我慢するのが精いっぱいだった。
時折、枢流が唇をそれから離して、器用に語りかけてくる。
「先輩、……ぼくね、もう……先輩を好きな時に、好きなようにいかせられるんですよ……」
「そ、そんなこと……あるわけ……」
沙羅衣が疑いの言葉を口にすると、怒ったように、唇の動きが早められた。
口の中で舌が激しく前後して、沙羅衣の弱点である裏側を強烈に刺激する。
指の抽挿も勢いを増して、沙羅衣を追い込んでいく。
初めて口戯を味わう沙羅衣が、耐えられるはずがなかった。
「枢流……もう……おれ……もう……」
「ふふ。分かってますよ、先輩。ほら……」
枢流は、左手の指を沙羅衣の後ろに使いながら、ペニスには口だけを残して、右手を上に伸ばした。
その指先で、沙羅衣の口を軽く押し開け、上下の唇と舌をねぶる。
「こうしていると、キスはできないですけど……これが、口でしているときのぼくのキスです。どうです、いけそうですか?」
沙羅衣は目を閉じた。
ほっそりしているのにやわらかな枢流の指は、容易に、彼の唇へとイメージの中で変換された。
絶頂がやってくる。
「ああッ!? い、いくっ! 枢流、いくうううっ!」
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