「…………なぜ、そうなる？」 「ほかの男にうつつを抜かしている先輩を見て、たまらない気持ちになりました」 「いやだから、さっきのはそういうことじゃなくてだな」 「気分的には、もう縛り上げて有無を言わせずやっけてしまいたいです」 「君、人の処女を何だと。いや、というか、無理だろう。さっきあんなに……」 　射精したのに。 　とはさすがに言えなかったが。 「あんなに射精したのに、ですか？」 「普通に言うよな」 「大丈夫ですよ。ほら」 　よく見ると、枢流の黒いショートパンツの前が、自然なシワではなく内側からの盛り上がりによって突っ張っている。 「な……」 「先輩となら、何度でも、ね。確かめてみますか？」 　枢流が沙羅衣の手を取り、その部分に触れさせた。 「……あ、本当に固く……」 「んッ……」 　枢流が声を上げると、沙羅衣はつい反射的に、手を引っ込めてしまった。 　なにか、いけないものを見てしまったような気になる。 「あ、先輩。やめないで……」 　枢流が、再び沙羅衣の手を取り、それに触れさせる。 　さらさらとした清潔な感触の内側から、熱く固いものがせりあがってきているのは、不思議な感触だった。 「ん……ほら、先輩も」 「あ……」 　枢流が手を伸ばし、沙羅衣のショートパンツの前をなでた。 　いつの間にか屹立してしまっていた自分にその時初めて気づき、沙羅衣は羞恥の声を上げる。 「な、なんで……おれは……こんな……」 「さっきのセックスが、よほどよかったんですね」 「うッ……」 　そう言われれば、返す言葉もない。 　枢流の細い指が、沙羅衣のショートパンツのすそから、するりと侵入してきた。 　さらに、下着と内ももの間にすべりこんで、すぐに沙羅衣の根本まで到達してしまう。 「ああ」 　先端ほど敏感ではないにせよ、体のほかの部分とは明らかに違うそこだけの甘い感覚に、沙羅衣は声を出した。 「先輩の体は、ぼくに味をしめている」 「う、あ、……そんな……ふうに」 　枢流の指は、ゆるやかに根元をしごいてくる。 　甘ったるい痺れが下半身を侵して、沙羅衣は、完全に勃起してしまった。 「こういう感じさせ方もあるんですよ……。穏やかな分、後戻りできなくなるんです……」 　確かに、なりたての皇帝の体は、みるみるうちに抵抗力を失っていった。 　もどかしい快感がペニスの先にどんどん集まってきて、自ら快感を求めて腰を振ってしまいそうになるのを耐えるので、沙羅衣は精一杯になる。 「枢流、君は……どうして、こんなこと……」 「ふふ。内緒、です」 　先ほど、風呂場で互いに全裸になっていた時の愛撫とは、感触が少し違った。 　下着の中に手を入れられて、ゆっくりと興奮させられていくのは、背徳感が呼び起されて独特の甘美さがある。 　枢流がキスをしてきた。 　舌をからめとられ、いよいよ体の支配権を奪われたような無力感が興奮を呼ぶ。 　そんな沙羅衣の状態を見透かしたように、枢流の空いていた左手が、皇帝のうなじ、鎖骨、肩口、そして乳首へ渡り、さらさらと撫で上げるように感じさせてくる。 「ひっ……あ……」 「先輩……ぼくを脱がして……」 　沙羅衣も、すでにそれを切望していた。 　与えられるだけの快楽では、もうがまんができなかった。 　キスを中断して体を離し、目の前のショートパンツを下ろしてやると、枢流の黒いボクサーパンツ（どうやらこの奴隷の部屋着はほとんどが黒色らしい）の中から、凶悪な形が激しく布地を突き上げていた。 　あまりに中心を持ち上げすぎて、裾の部分から、たくましい幹がチラリと覗いている。 　覚悟を決めて、沙羅衣はパンツを下ろさせた。 　目の前で、それに見入る。 　大きい。 　斜め上に、雄々しく反り返っている。 　段差も大きかった。 　ふるふるとわずかに脈打って震えている様子は、まるで、苦痛ではなく快楽で人を食い殺そうとする獣のようだ。 「ふふ……先輩、面白いものを見せてあげましょうか」 「お、面白い？」 「ええ。ぼくはね、先輩。先輩に見つめられているだけで、射精してしまうんですよ」