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第40話 どんなに大きくても苦しくてもこうしてあげたい

 こく、とのどの鳴る音が聞こえる。  枢流が飲み干したのだろう。 「……僕たちは先に出るよ、堅信。いきましょう、先輩。肩を貸します」 「……ああ」  そういって、皇帝と奴隷が部屋を出るとき。  堅信は、ベッドから起き上がれはしなかったが、 「……すまなかった、二人とも。……元気でな」  そう言ってきた。  二人もまた、 「ああ」 「元気でね、堅信」  言い残して、ホテルを出た。  耳の端に、かすかに、女装子の鳴き声が聞こえた気がする。  しかしそれもすぐに、街中の喧騒の中に紛れて消えた。 ■ 「いやあ、危ないところでしたね、先輩」 「そうだな。……で、おれに着せた、これはなんだ?」  二人は、枢流の部屋にきていた。  沙羅衣の体の自由が戻るまで、ということで枢流が誘ったのだが、八部通り復調したあたりで、枢流が「これに着替えましょう」と服を渡してきた。  問題は、その服だった。 「枢流、これは……どう見ても……」 「Aラインタイプの、ウェディングドレスです、先輩」 「だよな?」 「下着まで女性用に変えておいて、ノリノリなのかと思いましたが」  純白のドレスには、フリルや花のコサージュがたっぷりとほどこされ、乙女街道まっしぐらの仕上がりになっている。 「おれは、堅信くんじゃないぞ……?」 「分かってますよ。これは、先輩のために用意したのです」 「おれの?」 「先輩は、皇帝と奴隷の慣習には反対なのですよね?」 「あ、ああ」 「では、ぼくたちの関係も、別のものにしましょう。皇帝と奴隷ではなく、フィアンセです」  沙羅衣は、しばらく思考を巡らせたが、いまひとつ現実に追いつけない。 「それとこのドレスには、どんな関係が……?」 「これは、深い意味のない、カタチですよカタチ。気分が盛り上がるでしょう?」 「深い意味のないウェディングドレスってあるか?」 「ぼくはこれでも、反省しているんです。先輩との関係の構築に気が言ってしまって、カタチを整えることをおろそかにしていたと」 「できれば、関係とかカタチとかより、心とか気持ちのほうを整えたほうがいいんじゃないのか」 「ふふ。先輩ったら、いけずですねえ」  どうも、枢流の様子がいつもと違う。  身振り手振りが大きく、全体的に落ち着きがない。 「枢流。君なにか、ひどくハイになってるのか?」  ぴた、と枢流の動きが止まった。 「そう見えます」 「見える」 「ふふ。正直に言いますと、少し自覚があります」 「なにかあったのか?」 「ぼくの中で、たぶん死ぬまで絶対に変わらないのだろうなと思っていたことが、変わりつつある気がして。そんなこと、あるはずがないと思っていたので、浮かれているのでしょうね」  沙羅衣は、両手をグーパーと動かした。  ほぼ体の調子は戻ってきたようだ。 「いい方向への変化なのだな」 「ええ。……考え方も、少し変わりました。結論を言いますと、妊娠について、もう少し慎重に検討しようと思います」  それを聞いて、沙羅衣のドレスから露出した肩から、ゆるゆると力が抜けた。  どういう心境の変化化は分からないが、なんにせよ、性急にことを運ぼうとしないのなら、それはよかった。 「いや待て待て。結局、おれがなんでドレスを着せられているのかが、分からないんだが」 「先輩。ぼくは、その格好の先輩が、どうしても欲しくなりました。……だめですか?」 「枢流がか?」 「ええ。ぼくが抱えた目的とか、相手の性欲解消のためとかではなくて、ぼくが先輩と結ばれたいんです」  枢流は、ソファに座っている沙羅衣の横へ腰を下ろすと、静かにキスをした。  唇の間に舌が滑り込んできて、沙羅衣の性欲を侵略していく。  沙羅衣は枢流の体を抱いた。  その体の隙間に枢流の手が入り、ドレスの胸元をめくり、沙羅衣の乳首を指先でとらえる。  さらさらと指の腹でひっかくようにいじられると、沙羅衣の口から声が出た。  数分間、キスと乳首の愛撫が続いた。  すっかり荒くなった息を整えようと、沙羅衣は体を離そうとしたが、枢流がそれを追いかけてきて、許さない。  枢流の右手が乳首から離れ、ドレスの裾がめくられた。  勃起どころか、前触れの液体でしとどに濡れそぼったペニスが、ショーツの下で苦しそうに身もだえしている。 「ぬるぬるです……」  少し布地をずらしただけで、ペニスはショーツの間からはみ出してきた。  体を沈めた枢流が、それを口に含む。 「ああ!」  声を上げながら、沙羅衣は、言いたくても言えない言葉を飲み込んだ。  枢流、おれも……  今日の、堅信君みたいにして欲しい……  喉の奥まで、根元まで全部飲み込んであげたんだろう……?  おれも……  言いたい。しかし、恥ずかしすぎて言えない。  だが枢流は、すべてを見透かしたように、沙羅衣のペニスを根元まで飲み込んできた。 「く、枢流ッ!?」  苦しくないか、と安直な心配の言葉を投げようとしても、言葉にならなかった。  どうして? どうして、おれがどんなふうにして欲しいか分かったんだ?  それから、枢流の舌と唇が、縦横無尽に動いた。  とめどなく流れる前触れの液体は、だんだんと粘度と白さを増していく。  だめだ。このままでは。 「枢流……おれにも、させてくれ……」 「先輩が? ぼくにですか? お体は、もういいのですか?」  沙羅衣はこくりとうなずくと、枢流の体をソファに押し倒した。  そしてズボンをはぎ取ると、そこには、長大なペニスがすでに勃起して、天を向いている。  覚悟を決めて、沙羅衣は、それを喉の奥までゆっくりと飲み込んだ。 「せ、先輩。無理しないでください。ぼくのは、そんなことできませんよ」 「う……く……」  確かに、根元まで口に含むのは無理かもしれない。  だが、気持ちだけでも示したかった。  結果的に、枢流のペニスは、三分の一ほど余したあたりまで飲み込むのが、沙羅衣の限界だった。  限界をわずかにこえて喉に入れてしまった分、苦しさに耐え切れず、沙羅衣はペニスを吐き出してゲホゲホとむせた。 「先輩」 「へ、平気だ。まだだぞ……」  今度は無理せずに、口の中に入れられるだけペニスを入れて、舌と唇での愛撫で枢流に快感を与えていく。 「ああ、先輩……。気持ち、いいです……いやじゃ、ないですか……こうするの……う」 「いやじゃないよ。……こうか、枢流?」  沙羅衣は、自分がされたときのことを思い出して、特に敏感だろうと思われる部分を集中的に攻めていった。  不思議なもので、ペニスのわずかな震えや、枢流の足や腹に走る緊張から、確実に快感を与えているのが分かる。  枢流が感じている。その事実が、沙羅衣の興奮を加速させた。  しらず、力が入り、速度も増す。  沙羅衣が知らないうちに、枢流は追い詰められていった。 「せ、先輩! もう、もういけません! 僕ッ……」 「え?」  いきなりの降伏宣言に、沙羅衣の唇は止まることなく、現状の動きを続けた。  その結果、寸止めも手加減もない快感に、枢流が暴発してしまう。  こみ上げる射精感は、ペニスの根本でも、半ばでも、先端でも止められるはずがなく、沙羅衣の口の中で爆ぜてしまった。 「うああああッ! せ、先輩! いくうッ!」  どくんッ!  太く長いペニスの射精は、圧巻だった。  ビクンと大きく跳ねた肉の棒は沙羅衣の喉奥を突き上げ、どろどろとした欲望の詰まった液体を激しく打ち上げる。

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