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樹side 本当のこと
樹side
「懐かしいな。拓也とした以来。」
「……そっか。」
正直聞きたくなかった。悠の口から俺以外の男の名前なんて。
俺の事なんか悠は好きじゃないって分かってんのに……
なんでだろう……拓也と悠の恋を邪魔したくなる。
あの二人は両思い……ってことを知っているのに……
―4か月前
それは突然の告白だった。
「あのな、樹。」
「あ?なに?学校では話しかけんなって……」
「……そのな、唐突だけど俺……悠のこと好き……なんだ…こんなこと、樹にしか相談できなくて……」
「は?」
拓也が……悠を……
「まぁ、悠は俺のこと好きじゃないと思うけど……その……今度気持ちを伝えよう……と」
「言うな!!」
「え?」
「絶対言うな!」
これは嫉妬だ。取られたくないって言う……
「なんで?」
「だってその……な?悠と友達にもなれなくなったら大変だろ?悠オメガだから、誰かに守ってもらわないといけないのに、お前を失ったら……」
俺のこんな言い訳に拓也は、少し迷った末こう答えた。
「……ああ。たしかにそうだな。」
「……あれだぞ??告るにしても卒業してからとかにしないと。」
俺の口から出ることは全部言い訳。いいように思わせてるだけ。
「確かに!!じゃあ、卒業まで待つよ。お前なら信頼出来る、相談出来て良かった。ありがとう。樹。悠の事……発情期の世話とか含めてよろしくな。」
……拓也は、本当に良い奴だ。こんな俺のこと信頼してくれている。
俺は分かっていた。悠が拓也を好きだから、両思いだって。
本当に最低なやつだ。俺は許されないことをした。
「なぁ……悠俺な……」
キーンコーンカーンコーン
「なっちゃったね。どうしたの?」
「……っ……なんでもない……」
「そ。じゃあ、また放課後ね。バイバイ」
「おう。またな。」
こんなことダメだよな……
悠に伝えたいけど、つたえる勇気がない。
伝えないといけないのに、伝えたら嫌われる……それが怖いんだ。
悠のことが好きでどうしようもないくらい好きで……早く番にしたい……。
そう思うんだ……悠が結ばれるべき相手は僕じゃないのに……
運命の番だったって分かった時は、飛び跳ねそうになったぐらい嬉しかったんだ。
だから、動揺を悠に見せないように、「そんなことどうでもいい」と、冷たくつきはなったんだ。
いつか、言わないと……でも、言う時は……その時が来たら……俺は……悠から……
悠から……離れよう。
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