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act.6 Ver.Wataru
熱のせいで潤んだ瞳は、このうえなく淫らに環を快楽へと誘い込んでいく。
抗いたくとも一度味わってしまったその甘美な身体から逃れられるはずはなく、最後にはいつもこうして懐柔されてしまうのだ。
「りお、今日はお見舞いに来ただけだから……なにも、」
言いかけた言葉はやわらかなくちびるに包み込まれ、いつもより温かな舌に溶かされ消えていった。
環の膨らみを弄ぶ手のひらや、首元に感じる吐息の熱っぽさ。
ほんのすこし体温が高いだけのことなのに、なぜか興奮してしまう。
「痛っ」
指が痣に触れた途端おもわず漏れた声に、莉音がびくっと身体を震わせた。
「ごめん……」
怯えた表情に、環はまたやってしまった、と後悔する。
付き合い始めた当初からずっと、莉音はどこか環の機嫌を損ねることを恐れている節があった。
こんなことで嫌いになんて、なるはずがないのに。
しかし、不安そうな姿に嗜虐心が刺激されてしまうのも事実で。
「もう、ひどいなぁ。そんなことするワルイコには、お仕置きが必要だよね?」
わざと声のトーンを低くして囁くと、目の前の濡れた双眸が欲を映して揺らめく。
「なんでもするから……ゆるして」
期待と怖れがないまぜになったような眼差しに、罪悪感が膨らんでいく。それはやがてはじけ、あとに残るのは奇妙な愉悦だけ。
「じゃあ、自分でイクとこ見せて。オレはなにもしないから」
こくりと頷いた莉音は、身体を起こすとヘッドボードに背中を預ける。パジャマのズボンと下着を一度に脱ぎ捨てると、既に固くなったものに手を添えた。
「ちゃんと後ろも触ってね」
「ん、……っは、あ」
カウパーを絡めた指を秘所にあてがい、ゆっくりと挿入していく様を、環は不思議な気持ちで眺めていた。
悠や夕爾に言われるまでもなく、この関係が歪なものだということなんて、ふたりとも嫌というほどわかっている。
「あ、あっ……わたる、」
「りおのカワイイとこ、ぜんぶ見えてるよ。いっぱい指を咥えて悦んでるね」
彼が望むのなら、自分は悪魔にだってなれるだろう。
たとえそれが地獄へ堕ちる背徳行為だったとしても、ふたり一緒ならなにも恐れることはないのだから。
「っは……あ、わた、るっ……もう……!」
「りお――」
あいしてる、と形どった口元を片手で遮って、環はうつくしい笑みを浮かべた。
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