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act.12 Ver.Rio

 熱を帯びた塊があてがわれた瞬間、身構えた莉音の髪をあやすように、環の手が優しく触れた。  これから行われようとしていることとは真逆に思えるようなその仕草は、不思議と緊張をほぐしていってくれる。 「りお、ゆっくり、するから……そのまま力抜いてて」  こくりと頷くと、圧迫感とともに身体のなかに信じられない質量のものが押し入ってきた。   「ふ、あっ……、わたる、あついっ」  無機質な玩具とは比べ物にならない安心感。  愛するひとと繋がることが、こんなにも満たされるものだったなんて、知らなかった。 「りお、大丈夫?」  そう言った環の方がなんだか辛そうに見えて、莉音はまだうっすらと残る頬の傷をそっと撫でる。 「お前こそ……我慢しなくて、いいから」 「っ……あー、ほんと無理、可愛すぎ」  ちいさな声とともに降ってきたキスに応えながら、震える脚を環の腰にまわす。 「んんっ、りお、煽らないでってば……!」  本人にそんなつもりはないのだが、莉音の言動ひとつひとつが、環の余裕を奪っていくようだった。 「あっ、おくま、で……っはいってる、」 「だから、そーゆーこと言っちゃダメだって……もう、おかしくなりそ」  最初はおそるおそるだった動きが、だんだんと快感を追うように激しく、深くなる。  最奥を突かれるたび、身体で感じるものとは別の喜びがこころを満たして。 「オレ、もう限界かも」 「ん……なかに、出していいから……っ」  それが何の意味も持たない儀式だとしても、莉音は愛された証を残してほしかった。  目の前のうつくしい顔が歪んで、自分のなかに彼の想いが注ぎ込まれるのを感じる。 「わたる、あいしてる」 「りお、オレも。愛してる……もう、離さないから」  ぐったりと覆いかぶさってくる身体を受け止めながら、莉音は天井に描かれた宗教画をぼんやりと見つめた。  誰にも認められることがない関係だとしても。これが、神に背く行為だとしても。  いま感じているこの気持ちに、もう嘘はつきたくないと思う。  ふふ、と耳元で笑い声がして、視線を向けると環がにこにこと笑っていた。  いかにも幸せそうなその姿に、なんだか照れくさくなってしまう。 「重い……」 「えー、もうすこしこうしてたい」  それは莉音も同じだったが、あえて口にはしなかった。代わりに、背中に回した手にちからを込める。  恐怖心が消え去ったわけではなかったけれど、予感だけはあった。  ふたりなら、どんなことも乗り越えられる、と。

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