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翳る気持ち
ただ睦月自体が雅のような明るいやつは苦手な方なので、好かれているかどうかは微妙なところだが。
「お前はすぐ睦月に触ろうとするから会いに来んな」
「なんだよー? むしろ触ることで治るかもしれないだろ?」
「……いいから来るな」
そんなことで治れば今の今まで苦労などしていない。
精神的なものが慣れというもので良くなるわけではないのだ。
むしろ睦月の場合は余計に拗らせていくタイプなので、気安く触れるのは心の傷を抉りかねない。
(そんなこと言っても……俺も今朝、触れてしまったけど……)
横でぎゃあぎゃあうるさい雅を放っておいてさっさと教室に向かい、席についてから机にうつ伏せになる。
「ユキ、寝んのかー?」
「寝る。おやすみ」
別に眠たいわけではないのだが、今朝の睦月からの拒絶に正直、雅の相手を出来るほどの精神的な余裕はなかった。
そんな寝たフリをする俺に雅は「授業前に起こすなー?」とだけ声をかけて離れていく。
たぶん、構われたくないという気持ちを汲んでくれたのだろう。
ああ見えて人のことをよく見ているやつではあるので、こういう時には本当に有り難かったりする。
(今度、何か奢ってやるか……)
クラスメイトの談笑を左の耳から右の耳へ聞き流しながら、痛む心から目をそらすように瞼を閉じた。
俺と睦月は幼馴染だ。
昔からいつも仲が良くて、睦月はあんな風になってからも俺に懐いてくれている。
俺はそんな幼馴染の睦月のことが好きだ。
友達や幼馴染としてだけじゃなくて、恋情として睦月のことが好きだ。
ただ、こんな気持ちを伝えたところで、今の睦月にはきっと迷惑でしかないし、仮に付き合ったところでキスも出来なければ手を繋ぐことさえ叶わない。
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