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羊のぬいぐるみ

 なら、今のまま幼馴染として傍にいる方がお互いのためになるのだと諦めている。  諦めては、いるのだが……そんなに簡単にこの気持ちがなくなるわけでない。  なくならないから、苦しい。  嫌いになれたら楽なのに。  それでも、昔から今まで睦月を嫌いになることは出来なかった。  むしろ、俺が守ってあげなければ、傍にいてあげなければ、そんな風に言い訳を作って睦月の傍にいる理由にしている自分がいた。 (俺も大概……バカだな……)  そんな風に自虐を繰り返しながら、朝のホームルームが始まるまで寝たフリをしてやり過ごすのだった。 ◇ ◇ ◇  その日の全ての授業を終えて、通学鞄に荷物を纏めると早々に教室を後にした。  雅はあれでいて陸上部なのでホームルームの後は風のようにさっさと教室からいなくなる。 (まぁ、絡まれると面倒だしいいんだけどな)  そのまま玄関へ向かい靴を履き替えると外に出る。  冷たい風が体を撫でて、ぶるっと身震いした。  真冬日なだけあって流石に寒い。 「さっさと買い物して家に帰るか……」  学校を後にして、いつも買い物をするスーパーで夜の間に決めておいた材料をカゴの中に放り込んでからレジに向かった。 「ん……?」  ふと視界の隅に何かが横切り、それが妙に気になって俺は足を止めた。  視線を向けた先にあったのは睦月が前に欲しがっていた羊のぬいぐるみだった。  睦月はぬいぐるみを集めるのが趣味で部屋の中も割とぬいぐるみに埋め尽くされていたりする。  以前ここに二人で買い物に来た時に見つけて、ふわふわの毛がとても気に入ったらしく電子パッドで『ふわふわ、かわいい』と言って目をキラキラさせていたのを思い出して小さく笑みが零れた。 (今朝はあんなことがあったし、睦月に買っていってやろうかな)

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