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たい焼き屋

『大丈夫。その公園に今たいやきの屋台があるみたい。俺が奢るから行こ』 「え? そんなのあるのか?」  一体どこ情報なのか知らないが、俺の驚きに睦月は「ふふん」とドヤ顔をしてから先頭をきって歩き出した。  裏手は人通りも限られていてそんな場所に屋台なんか出しても儲かるものなのだろうかと思ったが、実際に案内された先の屋台につくとなかなかに人だかりが出来ていた。 「マジであったんだ」 『情報だけなら俺の方がユキより上』  またもやドヤ顔して胸を張る睦月が妙に可愛くてつい笑みが零れてしまう。 「人ちょっと多いし俺が買ってくるから睦月はそこの椅子で待っててくれ」  手近にあったベンチを指差してから屋台へ走り出そうとした俺の服の裾がぐんっと引っ張られ踏み出そうとした足が止まる。  あまりに突然のことでびっくりして振り返ると、睦月が少し顔を強張らせながら服の裾を掴んでいた。  その手がするりと裾を離してタッチペンを取ると電子パッドに何かを書き込む。  微かに震えるペン先に少し四苦八苦しながらもそのまま画面をこちらに向けた。 『今日はお礼だから、俺から出させて』 「でも……」 『おねがい』  その言葉に渋々頷くと睦月はぱっと笑顔になった。  そのまま鞄の中から財布を取り出しそれを先程買った本の上に乗せて差し出してきた。 「なんか、気ぃ使わせてごめんな」 『ううん、気にしないで』  今度こそ俺は屋台に向かうと、四、五人程いる列の最後尾に並んだ。  暫くしてからやっと注文できるようになり、たい焼きを二つ購入する。  落とさないよう腕に抱え込んで先程のベンチまで戻ると、睦月が風に吹かれながらたそがれているところだった。

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