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穏やかな一時 2

 それから二人で書店近くにあるカフェでコーヒーとサンドイッチを注文して軽めの昼食を取る。 「人少なくてよかったな。お昼を過ぎてても多いときは多いし」  最後の一口を食べ終わりコーヒーを飲んでから、同じく食べ終わってゆっくりしている睦月に話しかけた。 『ユキとゆっくりできるの、うれしい』  本当に嬉しそうに笑顔でそう書かれた画面を俺に向けて微笑んでくれる睦月に俺も笑みを零した。  今日は、嬉しいことばかりかもしれない。  二人で出かけられたこともそうだが、こんなに話しをしたのは久しぶりな気がする。  睦月が喋れなくなってから極力、話しかけることを避けていたため長く一緒にいることも少ない。  それが睦月のためでもあったし俺のためでもあった。  自分の存在が負担になってしまう気がしてどうしても遠慮してしまうのだ。  今日も睦月にとってはしんどい一日になっているのかもしれないが、それでも一緒にいたいと思ってくれていることが伝わってくる。  いっそ今ならこの気持ちを伝えてもいいのだろうか。 (……いや、それはまた別だろ)  幼馴染と恋人ではわけが違う。  それに一緒にいたいといっても必ずしもそれが恋愛というわけではないのだから。 「……とりあえず、出ようか」  今のこの幸せな気分を自分で落としていくのも嫌なので、俺は気持ちを切り替えるためにも店を出ることにした。 『俺が払う』  支払いをすべく財布を出そうとして、睦月が音を立てて椅子から立ち上がりそう一言書かれた画面を俺に向けてきた。 「え……でもさっきも払ってもらったし、ここは俺が払うって」 『俺が払う!』 「お、おう……そうか……わかった」 睦月が怒ったように口を膨らませながら電子パッドをグイっと近づけてくるので、気圧されてしまう。

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