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無意識の言葉

 結局カフェ代まで睦月に払わせてしまって、少し申し訳なかった。  気を遣わせることをしてしまっただろうか、などと考えていたら 『ぬいぐるみすごく嬉しかったから。本当にありがとう』  と、俺の考えを見透かすようにすぐさま画面そう伝えてくると深々と頭を下げてきた。 「い、いちいち頭は下げなくていい! わかったから! でもあんま無理すんなよ。俺は睦月といられるこの時間だけで、十分お礼になってるんだから」  いきなり頭を下げられて慌ててそう言うと、なぜか睦月の頬がみるみる朱色に染まっていく。  そのまま気まずそうに俺から視線を逸らしたあと顔を伏せた。  一瞬、理由がわからず首を傾げたが、先ほどの自分の言葉を思い出して、あまりの恥ずかしさに頬に熱が集まる。 「あ……えっと……変なこと言ってごめん……!」  謝る俺に睦月はブンブンと勢いよく首を振った。 『大丈夫! うれしかったから!』 「…………っ」  どういう意味なのだろうか、それは。  微妙に気まずい空気が流れて俺は話を逸らすようにこの後のことを尋ねた。 「えーっと、これからどうする? とりあえず散歩でもするか?」  苦し紛れの問いかけに睦月は小さく頷いてくれる。 「じゃあ、適当に歩こうか」  そのままストリート沿いを外れて裏手に歩みを進めた。  しばらく行くと河川敷が見えてきて、上へ行くための坂を登って堤防道路に出ると景色が大きく開けた。 「さっむ!!」  さすがは河川敷だけあって冷たい風がもろに体に吹きつけて寒い。  そのぶん周りの景色を遮る高い建物もなく見晴らしがいいので、雲のかかった空もいつもより広く感じた。 睦月に触れてしまったあの日に見た景色とはまた違った目の前の光景に、俺は小さく息を吐き出して睦月の方を振り返る。 「キレイだな」 『うん。きれい』  睦月も俺よりやや後ろで遠くに建ち並ぶビルを目を細めて眺めていた。  ふと何気なく空を見上げる。  先程見たときにも感じたが、厚い雲が青空を覆い隠していて雨が降りそうな天気になっていた。

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