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返ってこない返信

 あの後。  睦月が上がってきてからすぐ、俺も風呂に向かった。  冷えた体が温まってどっと疲れが押し寄せてきたせいで十分ほど湯船の中で眠ってしまって、慌てて起きると直ぐに風呂から上がった。  体を拭いたあと服を着て居間に行くと、睦月が心配そうな顔をして駆け寄ってきて何度も頭を下げてきた。  気にすることはないと言って一先ず帰らせたが、そのあとまたメールで謝罪文が送られてきて返信で「気にするな」と送り返す。  だけど、いつもなら返ってくる返信が今日はいくら待っても返ってこなかった。  まだ寝る時間には早く、心配になって二階へ上がる。  家が隣同士で二階の自分の部屋がある位置にちょうど睦月の部屋がある。  ただ、ちょっとした事情で俺の家と睦月の家はかなり密着している状態だった。  昔はこの窓から互いの部屋に出入りしたりしていて、用がある時もだいたい窓から相手を呼ぶことが多かった。  その名残で睦月の部屋の窓をコンコンと叩いてみるが、暫く待っても中は暗いままで応答も返ってこなかった。  もしかしたら一階にいるのかもしれないと階段を降りて玄関へ向かうと外に出る。  そのまま隣にある睦月の家のインターホンを鳴らしたがやっぱりなんの応答もなく。  一緒に持ってきていたスマホで「いないのか?」とメッセージを送ってみるが幾ら待ってもやっぱり返信は返ってこなかった。 「……睦月」  そこまで気にするようなことじゃないほどの出来事にも、睦月は普通の人では想像が出来ないような落ち込み方をするときがある。  こういう時はいくら構っても無反応が多いので、俺は諦めてそのまま自宅に戻ることにした。  煮えきらない気持ちのまま、遅めの夕飯を食べて歯磨きをしたあと大人しく布団の中に潜り込む。 「ごほ……」  明日は、睦月と普通に話せるといいのだが。  そんなことを考えながら小さな不安を胸に、俺の意識はゆっくり眠りの底へ沈んでいった。

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