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風邪
その日は朝からひどい頭痛に悩まされていた。
「う〜……あったま、痛ぇ……」
暖房をつけて布団に入っていても体は寒さを覚えて、布団の中でぶるっと身震いをする。
視界もグラグラして、起き上がろうにも起き上がれなかった。
「しんど……」
体のだるさと僅かなのどの痛みもあり、もしかすると風邪を引いてしまったかもしれない。
昨日の雨や風呂場で寝てしまったことも考えると風邪の一つくらいは仕方ないが、それよりも睦月が知ったらまた落ち込んでしまうかもしれないという不安の方が何倍も大きかった。
「……さむい」
冬ということもあって余計に寒さを覚えて、口元まで布団を引っ張り上げる。
それでも悪寒が酷くて、俺は熱を閉じ込めるように体を丸めた。
そんな時に家の中にインターホンの音が鳴り響く。
「やば……誰か来た……」
俺は緩慢な動作で布団から起き上がると宮棚に置いてある時計に目を向けた。
午前九時。いつも休日に睦月が俺の家に訪ねてくる時間だった。
(ということは、今の、睦月か……どうしよう)
居留守を使えるような時間ではない。
でも、いま睦月に会うと風邪のことがバレて確実に自分の事を責めてしまうだろう。
そう思うと出るに出れなくなる。
とりあえずベッドから立ち上がろうとした時にピコンとスマホが音を立てた。
ロックを解除して確認するとやっぱり睦月からのメッセージで。
『ユキ、やっぱり昨日のこと怒ってる……?』
文章からでも不安げな様子がありありと伝わってきて慌てて文章を打ち込む。
視界がグラグラして少し手こずったが睦月に返信を送り返した。
『違うよ。ちょっと、今は動けないから……今日は、ごめん』
俺の返信に睦月からすぐに返事が返ってきた。
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