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君の優しさに。

 38.3℃。  そりゃあ、しんどいわけだ。 「……ぅ」  もぞもぞと布団に潜り込む俺を横目に、睦月は階下に降りてサランラップを片手に戻ってくるとゼリーを丁寧に包み込み、体温計を除菌シートで拭っていく。  テキパキと片付けをしている睦月を俺はぼーっと見つめた。 「睦月、ごめん……」  つい謝罪の言葉が出てきてしまう。  そのせいで昨日のことがまた頭の中で蘇ってきて、熱のしんどさも重なって気がついたら涙が零れ落ちていた。 「……っ、ごめ……ん……」  そんな俺の様子に睦月が驚いておろおろし出す。 『ユキは悪くない。俺も昨日はごめん。今日はユキの傍にいるから』  そういって睦月は安心させるように微笑んでくれた。 (俺、かっこ悪……)  そんな睦月を見て、恥ずかしさで頭まで布団を被って服の袖で涙を拭う。  こんなことで泣いてしまって本当にかっこ悪い。  こういうとき安心させてあげられるように笑えたらいいのに、俺が泣いてどうするのか。  自己嫌悪に苛まれていると布団越しにツンツンと何か固いもので突かれる感触があって、恐る恐る布団から頭を出すと睦月へ顔を向けた。 『ユキ、昨日はありがとう。とっても楽しかった。雨に濡れたのも、ユキとの大切な思い出』 「むつき……」  ふわりと微笑んでくれる睦月に無理をしている様子はなく、むしろ本当に嬉しそうだった。 「俺も、楽しかった。睦月と一緒に過ごせるだけで、すごく嬉しかった……。ありがとう」 「ぁ……」  睦月が頬を染めて小さく声を上げる。  時たまだが、こうして睦月が小さく声を出せるときがある。  喋るというよりポツリと雨の雫が落ちるような、そんなささやかなものだが。

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