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漂う不安を胸に

 ただ、それを言葉にすると睦月が気にしてしまうのもあるし、心への負担も大きくなってしまうので一緒に学校へ行こう、とは言いづらかった。  俺の一言にシン……と静まり返る部屋の中。  あまりの沈黙の長さに息苦しくなってしまって、そんな空気を払おうともう一度口を開いた。 「えっと、学校には行けなくてもちゃんと勉強出来る環境があるのはいいよな。便利な世の中になったもんだな」 『ユキは俺に学校に行ってほしい?』  ……え?  そんな風に聞こえてしまったのだろうか。  その願望があるのは事実なので少し否定しづらい。  だけど、睦月が今の状態で心が落ち着くのならそれで良いという気持ちももちろんある。 「そう、じゃないけど……そりゃ、一緒に行けたら嬉しいけど。睦月の気持ちの方が大事だから、無理して行かなくていいって俺は思ってるよ」 「……ん」  そんな俺の言葉に睦月は顔を俯かせて瞳を伏せてしまった。  マズい……。  また傷つけてしまったかもしれない。  そう思ったのも、つかの間。  睦月は顔を上げてにこりと微笑むと 『夜ご飯、用意してくるね』  と言い残して立ち上がった。  そのまま部屋を出ていくと、階下へ降りていく。  俺は急なことに呆然としたまま見送ることしか出来ず。 「……気にしてないと、いいけど」  それだけが少し不安だ。  ここ最近、たまに睦月との会話が上手くいかない。  傷つけたいわけじゃないのに、余計なことを言って気を使わせてしまっている気がするのだ。 (気にし過ぎなのかもしれないとは思っても……気になっちゃうんだよな……)  睦月との付き合いが長いせいで俺も臆病になっているのかもしれない。  好きな人を傷つけたくないと思うあまり、会話の距離がとても遠くなっているように感じた。

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