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何気ない幸せ

 それから、なんとか落ち着きを取り戻して、睦月に謝ってから一緒に学校へ向かった。  人一人が入れるくらいの距離を空けて隣を歩く睦月を横目でチラリと見ると、たまに視線が合って訳もなく恥ずかしくなり視線を逸らす。  そんなことを繰り返しながらも、別に居心地が悪いわけではなく、むしろ安心するような居心地の良さがあった。  きっと、俺の気持ちの問題なのだろうが。  こうして睦月と肩を並べてまた学校に行くことが出来ることが何よりも嬉しかった。 「……なんか最近、びっくりするくらい幸せで、怖いな……」  今までが俺にとっても睦月にとっても、苦しい時間の方が多かったから、その分だけのいいことが返ってきたのかもしれないけれど。  どん底まで落ちる恐怖を知っているからこそ、幸せな日々が、少しだけ怖かったりするのだ。  そんなことを考えていたら睦月が急に立ち止まって、鞄の中から電子パッドを取り出すとさらさらとペンを走らせ出す。 「?」  書き終わったのか顔を上げてこちらを見つめてから、迷うように暫く視線を彷徨わせた。 「……っ」

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