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久しぶりの学校

 学校に着いて教室のドアを開けると、数名が挨拶をしてきてそれに適当に返事を返す。  俺と睦月は同じクラスなので必然的に一緒に教室の中へ入ることになり、クラスメイトの何人かが睦月の姿に気づいて、驚いた顔をした。 「あれ?! 雨月(うげつ)じゃんっ! 何、学校来たの?」 「……ぁ」  睦月は俯いて瞳を伏せながら小さく頷くが、その肩が微かに震えていた。  この状態になってからこんなにたくさんの人に注目されることがなかった睦月にとって、今の状況は恐怖以外の何者でもないのだろう。 「あー、悪い。試しに登校したいって言ったから俺が連れてきたんだ。あんま気にしないでくれ」  歩き出しかけていた足を止めて、自分の体で隠すように睦月の前に立つ。  チラリと後ろに視線を投げるとびっくりした顔の睦月と目が合って小さく微笑み返した。  大丈夫。  そういう思いを込めて。 「まぁ、ユッキーがそういうなら気にしないけど」  注目していたクラスメイトが興味が失せたように俺達から視線を外したのを見届けてから、睦月の前から離れて席に歩き出す。  一応、席の俺の斜め後ろで、比較的近くにいることが出来るので何かあればすぐ助けに入れるだろう。 「睦月、なんか困ったことがあったすぐ言えよ?」 「ぅ、ん……」 「…………」  睦月の声が聞けることに、まだ、心は慣れない。  嬉しさでニヤけてしまいそうな口元をぎゅっと引き結んでなんとか耐えてながら、一限が始まるまで持ってきていた本を取り出して適当に時間を潰すことにした。

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