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二人きりの昼食
そのあとのニ限から、個人的な事情とやらで遅刻してきた雅が睦月にうざ絡みしたこと以外は特に変化はなく、いつもと変わらない――でも、いつもとは少しだけ違う穏やかな時間が流れた。
それから昼休みになり、一緒に食べたいとごねる雅から逃げるように睦月と二人、屋上に向かった。
「さっぶ!!」
屋上の扉を開けると冷たい北風が吹き抜けて、思わずぶるりと身震いをする。
この真冬に屋上で昼食を取るようなやつはいないだろうとは思ったが、そりゃあそうだ。
流石にこれは寒い。
後ろにいた睦月を振り返って首を横に振ると扉を閉めた。
「ここで食べようか。流石に風邪引く」
俺の言葉に睦月はこくこくと頷いてから、扉の横に持ってきていたタオルを二枚、距離を開けて敷いてくれたのでそこに腰を下ろした。
塔屋で食べるというのもちょっと埃っぽいし嫌なのだが、今の時間の学食は人が多いので行けたものじゃないし、教室は騒がしいので結局ここで食べるしかない。
まぁ、睦月と二人で過ごせるのなら、この場所でも俺は全然構わないのだけど。
「いただきます」
昨日の作り置きを詰め込んだ弁当をつつきながら、チラリと睦月に視線を向けるとパチリと目が合った。
「ぃ、た……き、ます」
「うん」
頑張って発せられた“いただきます”の音に小さく微笑み返してあげると、睦月はふわりと顔を綻ばせてから弁当に箸を伸ばした。
会話らしい会話はなかったけれど。
それでも。
それでも、睦月とこうして学校で一緒に昼食を取れたことは、俺にとってとても幸せな時間だった。
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