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雅からの提案
その睦月はというと、何やら真剣な表情でノートにシャーペンを走らせていて、俺が見ていることには気づいていないようだった。
こうして一方的に見つめることは出来るのだが視線が合うとすぐさま目を逸らされてしまう。
それが、俺の心に、地味に効いてる。
「あ、そーだ!」
「あ?」
妙案でも思いついたと言うようにポンと手をうってニカッと眩しい笑顔を浮かべる雅にピクリと片眉を動かした。
嫌な予感しかしねぇ……。
「今日の放課後さ、三人でデートしようぜ」
「……何言ってんだ? ついに頭でもおかしくなったか」
「失礼なやつだな。真剣に言ってんのによー!」
つーか、デートってなんだよ。
三人でデートとか言うやつ、初めて見たぞ。
しかも全員同性だし。
「まぁ、デートは揶揄っただけだけど、とりあえず三人で放課後、遊びに行こーぜ」
「めんどくさ……」
よりにもよって無駄にギラギラ明るい雅と一緒とか絶対目立つだろ。
けれど、次に放たれた言葉に俺の思考は一気に塗り替えられた。
「んで、途中で俺は帰るから二人で仲直りデートしてこいよ」
「…………」
まぁ、デートはまた揶揄ってるだけなのだろうが、二人きりになれるということにいちいち反応してしまう。
たとえそうなったところで、話が出来るかなんてわからないというのに。
(でも、外だとある程度は話せるかもしれないし……。もしかしたらこういう風に出掛けた方がお互いに切り出しやすくなるのか……?)
一縷の望みをかけてでも睦月と前のように戻りたかった。
「……わかった。とりあえず、雅から睦月に話しておいてくれないか? 俺じゃ、嫌がるかもしれないし……」
「しゃーねーなっ! この雅様が一肌でも服でも脱いでやるよ!」
「いや、服は脱がなくていいから」
「そんなつれねぇこと言うなよー!!」
いちいちテンションの高い雅に僅かに頭痛を覚えながら、睦月が放課後に出掛けることに頷いてくれることを祈るばかりだった。
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