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喜びを共有して
「大丈夫かお前?」
声をかけるも全く動く気配がない。
仕方がないので睦月に許可を取ってから机に置かれた教科書を丸めると、それで雅の頭をポコポコと叩いてみる。
「おーい、雅ー。帰ってこい」
「……はっ! て、叩くな!」
やっと戻ってきたかと思ったら秒で跳ね除けられてしまった。
無理矢理連れてきた仕返しが出来たので良しとしとくか。
「つーか! 睦月、喋れるようになったのかっ?! うおっ?!」
「……っ」
興奮のあまり睦月に詰寄ろうとする雅の襟首を掴んで寸でで静止させてから、その頭を軽く叩く。
「やめんか。ちょっとだけ喋れるようにはなったけど、まだ触れるのは無理なんだ」
「あー、そうなのか。いや、でも! 喋れるようになっただけ凄いって!」
我がことのように大はしゃぎする雅に何故か俺まで嬉しくなってきてしまう。
こうして話せるようになったことを喜んでくれているというだけで、睦月をちゃんと大切に思ってくれているということだから。
「……嬉しいって気持ちはわかった。けど、ちょっと静かにしようか」
「あ……」
雅は存在自体がギラギラの太陽みたいなものなのでもちろん目立つわけで。
教室に残っていたクラスメイトやちょうど廊下を歩いていた生徒がビックリしてこちらに視線を向けていた。
「悪い……。でも、ホント良かったな」
「そうだな」
雅の言葉に同意しながら俺はこちらを見つめる睦月へ軽く笑いかけた。
本当に良かったという気持ちを込めて。
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