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行き先
「とりあえず、そろそろ行くか。あんま遅くなるとやべぇしな」
雅はそう言って俺の頭を小突く。
「いってぇな……。睦月、教科書とか俺が詰めようか?」
「だいじょ、ぶ……」
小さな声でそう呟いていそいそと教科書を鞄に詰め込む睦月を一瞥してから、ふと窓の外に目をやった。
冬というだけあってこの時間になると夕日が主役のように優しく教室を琥珀色に照らして、その光に僅かに目を細める。
(確かにあんまり外に長居は難しいな。日が沈むと寒くなるし……)
「ユキ、睦月も支度終わったし行くぞー!」
「いや、どこ行くんだよ?」
帰り支度を済ませた睦月を見て雅が俺の首に腕を回して寄りかかってくる。
そもそも、行き先なんて全く考えていなかったので、行くぞと言われてもどこに行けばいいのか。
「んー、ならさ、ゲーセン! ゲーセン行こうぜ! 高校生ならゲーセンでなくっちゃな!」
「なんで高校生ならゲーセンなんだよ……人多いじゃねーか」
この時間だと俺たちと同じように遊びに出ている奴らがいるだろうし、睦月のことを考えると出来るだけ避けたい。
「えー?! んー、じゃあ、大通りにあるショッピングモールの中でも適当にぶらつくかぁ」
「悪いな、雅」
「いや、つか、モールの中でなんか食おーぜ!」
気を使ってくれているのか、さっさと話題を変えてくれる雅に心の中で感謝しながら、睦月へ声をかけた。
「睦月もそれでいいか?」
「うん」
「んじゃ、今度こそ行くぞー!」
元気よく教室を出ていく雅に苦笑を漏らしてから睦月に手招きする。
睦月も小さく笑みを零して頷くと、二人で勝手に先々行こうとする雅の後を追った。
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